第41話 後日譚/あるいは幕間 [EP1 ルズベリーにて・了]

文字数 1,281文字

 その後、オレリーとマルレーン――ふたりの〝女渡り〟はC.(カルメーラ)C.(キアラ)に散々絞られることになった。
 C.C.にとって彼女たちの銃の腕はこの際どうでもよく、娘だけで勝手に飛び出してゆく無謀は、レンジャーとして到底容認できるものではないらしかった。……だからといって邸で援護に回ることになった男たちに代わりが務まったかというと、それは彼女の与り知ることではないようである。その日、バーニー、ドク、エミールは、早々にC.C.の視界から消えてしまった。

 ラーキンズとエンシーナスは町長によって正式に告発されることとなり、それぞれ職を罷免され相応しい刑を受けることとなった。
 事件の背後に()()いま一人の首謀者、ロベルト・カウペルスは逃亡し、中西部タウンシップ同盟によって指名手配される身となる。当然、彼はもう巡回判事の身分ではない。
 他の保安官助手、自警団、レンジャー隊員らについても、相応の刑が科されることとなった。

 これら一連の処理は、大隊の本部営地からルズベリーへと2つのレンジャー小隊を率いて急行してきたヴェンデリーン・ザトロウカル大佐と大隊付き法務官のパメラ・ロランによって迅速になされた。小隊は、ことの翌日には早くも町に姿を現わしたのだった
 どうも大佐と法務官は、事の起こり――ローイードの支営地からエンシーナスが隊を動かしたあたり――から動き出していたようで、バーナビー・デイヴィス大隊付き法務官助手と綿密な連携を持っていたようである。

 本来の〝係争〟の当事者であるカウボーイ(バッカルー)らについては、ルズベリーの町が係争そのものの存在を否定したことで訴えられることもなく、スチームコーチの運行を妨げたことについても不問ということになった。
 事件の発端となった牛も、彼らのもとに無事に戻っている。


 C.(カルメーラ)C.(キアラ)デル=ペッツォ法務官補とバーナビー・デイヴィス法務官助手は、事後の書類仕事でしばらく町に滞在し、オレリーとマルレーンらとの間に個人的な親睦を深めると、冬になる前に大隊の本部営地へと戻っていった。おそらく栄転である。

 ふた組の〝渡り〟のとった行動は正当防衛だと認められた。
 それぞれの〝渡り〟の武勇譚が、また一つ増えただけのことである。
 オレリーとエミールは、数日の後には南へ向かうスチームコーチ(蒸気四輪車)の乗客となってルズベリーを発った。〝とある人物〟に会うために〈サウスポート〉に向かうとのことだった。
 マルレーンと〝ドク〟・アチュカルロは、いったん懸賞金の付いたカウペルスを追ってから南を目指すことにし、〈サウスポート〉での再会を約してオレリーらを見送った。




 ペンデュラムクロック(振り子時計)・ロータリから二組の〝女渡り〟の姿が消えても、この小さな町を吹き渡っていった旋風(つむじかぜ)の記憶は、例えばごく普通の牧童だったレキシー・ブレニスの脳裏に焼き付けられた。
 後年、彼は孫たちによくこの話を聞かせては、自分の名「レキシー」とオレリー・サンドリーヌの「サンドラ」は同じ語源なんだぞと、自慢して笑ったものだった。




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