第7話 うわさ話
文字数 1,317文字
帰りの電車の中で、和馬が吊革につかまってニヤニヤ笑って体当たりをしてきながら言った。
「悠斗ぉ~、見てたぞ、さっき。広瀬さんとなにを話してたんだよ」
「ああ、なんか喫茶店めぐりが好きなんだってさ。それで僕のうちのことを聞かれたから、場所を教えただけだよ」
准が大げさにガクッとずっこけてみせた。
「なんだよ? それだけ? 悠斗にもついに春が来たかと思ったのに」
「春が……って……全然そんなんじゃないから。話したのだってさっきが初めてなんだし」
「とか言いながらこいつ、いっつも広瀬さんを目で追ってるんだぜ」
和馬が肘で脇腹を突いてくるのを、手で払った。
「そんなことないよ。そんなに見てないって」
「いーや、絶対見てるって。構内で遠くを通りすぎる時も、絶対見てっから」
「嘘だよ。和馬、大げさすぎ」
「無意識に見てんのか? 悠斗、それはヤバいって。相当重症だな」
准まで和馬と一緒になっておかしなことを言う。そんなに見てるだろうか? そんなはずはないと思うんだけれど。
「けど、この間クラスの女の子が、広瀬さんはサークルの清水とつき合ってるとかなんとか言ってたな」
「あっちゃ~、彼氏持ちかぁ~! 悠斗、春が遠のいたな」
「だから違うって。そんなんじゃないって言ってるでしょ」
「そういえばその子、この前おまえにコクってたよな? 結構な美人だったじゃん。そっちにしておけばどうよ?」
和馬がまた余計なことを言う。僕はついムッとしてしまった。
「そっちにしておけば、ってなんだよ。相手に失礼だろ。それにあれはその場で断ったから」
「えー! もったいない……」
「和馬も准も、いい加減やめてやれよ。悠斗も困ってるじゃんか。でも悠斗、広瀬さんが本当に清水とつき合ってるのかどうか、それはちゃんと聞いておいたほうがいいと思うよ」
「そんなの聞けるわけないじゃないか。だいたい、なんて言って聞くんだよ。なんの関係もない僕がそんなこと聞いたら変じゃないか」
「それもそうか……」
「本当にもういいから。それに僕は……三人だから正直に言うけど……人を好きになるって感情が良くわからないんだよ」
僕がそう言うと、三人は黙ってしまった。三人には父とのことや関係性も話しているからだろう。
「広瀬さんのことは確かに気になるけど、気になるってことが好きって言うのとは違うだろ?」
「そりゃあ……そうだろうけど」
「じゃあ、好きになる気持ちってどんななわけ?」
僕は少しだけムキになっていたかもしれない。三人が彼女に対してどんな気持ちでいるのかわからないけれど、僕自身が広瀬さんを気にしているのとは感覚が違う気がした。
ただ、清水とつき合っているという話しを聞いたときは、ほんの少しがっかりしたけれど。
「正しいかどうかはともかく、まずは気になるってコトだろ。それとつい見ちゃうのもそうだろ。あとは、相手になにかしてあげたいって思うのもそうだよな。少なくとも俺はそうだよ。悠斗、もう一回、良く考えてみ? どうしようもなくたまらない気持ちが溢れたら、そのときのそれが、そうだ」
和馬は急に真面目な顔でそう言った。
「……抽象的過ぎて全然わかんないよ」
僕がそう言うと、慧一と准も「確かに」と言って笑った。
「悠斗ぉ~、見てたぞ、さっき。広瀬さんとなにを話してたんだよ」
「ああ、なんか喫茶店めぐりが好きなんだってさ。それで僕のうちのことを聞かれたから、場所を教えただけだよ」
准が大げさにガクッとずっこけてみせた。
「なんだよ? それだけ? 悠斗にもついに春が来たかと思ったのに」
「春が……って……全然そんなんじゃないから。話したのだってさっきが初めてなんだし」
「とか言いながらこいつ、いっつも広瀬さんを目で追ってるんだぜ」
和馬が肘で脇腹を突いてくるのを、手で払った。
「そんなことないよ。そんなに見てないって」
「いーや、絶対見てるって。構内で遠くを通りすぎる時も、絶対見てっから」
「嘘だよ。和馬、大げさすぎ」
「無意識に見てんのか? 悠斗、それはヤバいって。相当重症だな」
准まで和馬と一緒になっておかしなことを言う。そんなに見てるだろうか? そんなはずはないと思うんだけれど。
「けど、この間クラスの女の子が、広瀬さんはサークルの清水とつき合ってるとかなんとか言ってたな」
「あっちゃ~、彼氏持ちかぁ~! 悠斗、春が遠のいたな」
「だから違うって。そんなんじゃないって言ってるでしょ」
「そういえばその子、この前おまえにコクってたよな? 結構な美人だったじゃん。そっちにしておけばどうよ?」
和馬がまた余計なことを言う。僕はついムッとしてしまった。
「そっちにしておけば、ってなんだよ。相手に失礼だろ。それにあれはその場で断ったから」
「えー! もったいない……」
「和馬も准も、いい加減やめてやれよ。悠斗も困ってるじゃんか。でも悠斗、広瀬さんが本当に清水とつき合ってるのかどうか、それはちゃんと聞いておいたほうがいいと思うよ」
「そんなの聞けるわけないじゃないか。だいたい、なんて言って聞くんだよ。なんの関係もない僕がそんなこと聞いたら変じゃないか」
「それもそうか……」
「本当にもういいから。それに僕は……三人だから正直に言うけど……人を好きになるって感情が良くわからないんだよ」
僕がそう言うと、三人は黙ってしまった。三人には父とのことや関係性も話しているからだろう。
「広瀬さんのことは確かに気になるけど、気になるってことが好きって言うのとは違うだろ?」
「そりゃあ……そうだろうけど」
「じゃあ、好きになる気持ちってどんななわけ?」
僕は少しだけムキになっていたかもしれない。三人が彼女に対してどんな気持ちでいるのかわからないけれど、僕自身が広瀬さんを気にしているのとは感覚が違う気がした。
ただ、清水とつき合っているという話しを聞いたときは、ほんの少しがっかりしたけれど。
「正しいかどうかはともかく、まずは気になるってコトだろ。それとつい見ちゃうのもそうだろ。あとは、相手になにかしてあげたいって思うのもそうだよな。少なくとも俺はそうだよ。悠斗、もう一回、良く考えてみ? どうしようもなくたまらない気持ちが溢れたら、そのときのそれが、そうだ」
和馬は急に真面目な顔でそう言った。
「……抽象的過ぎて全然わかんないよ」
僕がそう言うと、慧一と准も「確かに」と言って笑った。