第十一話～本当の武器～
文字数 986文字
私に拳を使わせたのは君で二人目だ。
な、なんと！セツナの本当の武器はセツナ自身だったぁああ！！これまでセツナは499戦中たったの一回、鳥人のイカロスとの闘いにのみ拳を振るっている記録があります！鳥人のイカロスとは種族が獣人の鳥人でエル同様、翼で空を舞い、かぎ爪で攻撃をするプレイヤーでセツナとの闘いを機に格闘技を引退しております！
ゲホッ、ゴホッ！
腹にズキズキと痛みが走る。TWFのシステム上、怪我はしない。けれど痛みは半減しているものの感じるようになっている。
セツナの拳は殴られてしばらく経つというのに痛み続ける。
どうした、お前はこんなものか？私に拳を使わせたんだ、もっとできるだろう？
(痛い…痛い…もう嫌だ……やっぱり…格闘技なんて…。)
それでいいの…？
え……あれ、ここ…それに元の姿に…。
あの声だ。恵瑠は暗く、静かな場所に立っていた。
貴方は負けてしまってもいいというの？恵瑠。
え、エル？え、な、なんで…。
恵瑠の目の前にはエルが立っていた。そして声の正体がエルだと気づくのにもそう時間はいらなかった。
貴方が私を此処へ連れてきたの？
そう。貴方は此処へ来なくてはならなかったの。
貴方のせいで皆に追いかけられて嫌いな格闘技なんかさせられて最悪なのよ！私は静かに暮らせてればよかったのに！
鈍くさいと言われていじめられても？
貴方も私ならわかるでしょ！？どれだけいじめられても私には力がない！どうしようもできないの！
貴方には力がある。
またその言葉！？私には力なんてない！
ある、その証拠に鳥人のイカロスのみが出させたというセツナの本当の武器を貴方は出させたじゃない。
あれは…偶然で…。
本当にそう？貴方は自分でどうすればいいのか、どうすればセツナの攻撃を受けないか考えたじゃない。考える事も立派な力。貴方は貴方が思っているより弱くない。むしろ強いの。
…エル…貴方は何なの？私の知らない事を知ってる…貴方は私なの…？
……少し違う、でも私は貴方。そして、貴方も私。
貴方の身体…私に貸して？
どうしたんだ？急に動かなくなってしまったぞー！？気絶したのか？
…っ！
……。
エルはゆっくりと立ち上がる。
立ち上がったぁ！さてここからどう反撃…おや？何か様子が違うようだぞ？
……エル…。
なんかさっきまでのエルと違う…。
これは…さっきみたいに甘い拳じゃだめなようだ。
恵瑠…貴方が強いって事、私が証明してあげる。
