格闘技エリアに近づくにつれ、歓声は大きく、激しくなっていく。
エルは緊急イベントの制限時間がまだ残っているためフードを被ってエリアへと足を運んだ。
(格闘技苦手なんだけど……でもセラが楽しそうにしてるし…。)
ほら、あれが銀狼のセツナだよ。狼の獣人で瞬発力に長けてるんだ。
見えるんじゃないよ、視えてるんだ。わざと目を封じて、相手の殺気を感じ、素早い動きで翻弄する。それがセツナの戦い方なのさ。
さあ始まりました、TWF格闘技エリアのチャレンジマッチ!前回の戦いで25連勝を突破したエイラは誰にでも一回だけ挑戦できる権利を得たわけですが、その相手に選んだのはなんと!参戦してから全戦全勝、負けを知らぬ銀狼のセツナ!
今人気を集めている烏天狗のエイラに負け知らずの最強プレイヤー銀狼のセツナ!26連勝目になるのか、はたまた無敗を誇り続けるのか!目が離せないこの試合、今始まります!
あんたの無敗もここまで、これからは私が伝説にならせてもらうわ!
薙刀を構えたエイラはセツナに襲い掛かる。
けれどセツナはその場から動こうとしなかった。
バカにしてるの?あんたはさっさと私に倒されなさ…!!
エイラは薙刀を大きく横に振る。けれど斬った感触はなかった。むしろ、目の前にいたはずのセツナの姿は一瞬にして消えていた。
セツナはエイラの背後に立っていた。
そして拳銃の一つをエイラの背中につけ、そう呟いた。
っ!
……この距離だと避けるよりあんたの弾の方が早いわね…私の負けよ。
決まったあああ!!目にもとまらぬ早業で勝負が決まりました!!勝者銀狼のセツナ!!無敗の記録は破れる事はなかったああ!!!!
セラが興奮する隣でエルはぽかんと立ち尽くしていた。
あの人…すごい…まったく動いてないようにも見えたけど薙刀が振られる少し前にたちば…エイラさんの後ろへ回り込んでた…。エイラさんも相当早かったけどそれを上回る速さでないと…。
おめでとうございます、セツナ様。これで通算499戦目の勝利となります。
次の試合で500戦目となりますがエイラ様と戦ってしまってはもう今では強いプレイヤーはいないという事になってしまいますが、どうなされますか?
セツナに見られていると思っているエルの隣でセラはこくりと頷く。
私の500戦目を飾るプレイヤー……それはそこにいる“天使”だ。