第六話～まさかの～
文字数 831文字
恵瑠とセラは他のプレイヤーに見つからぬよう隠れたり、走り回ったりして二時間が経過していた。“天使”を探すプレイヤー達は血眼になり、チームを組んで手分けして探す者まで現れていた。
そういえばお姉さんの名前聞いてなかったね。TWFでは何て言う名前で登録したの？
え…。
セラの言葉に恵瑠はきょとんとする。
(登録…？そんなのしてない……え、ど、どうしよう…。)
どうしたの？
え…エル…。
(はわわ…いい名前が思いつかなかったからって本名言っちゃうなんて…。)
仕方ないとは言え、本名を言ってしまった事にエルは後悔した。
エル…いい名前だね、天使の名にふさわしいよ。
え、そ、そう？
える、という名前を褒められた事のなかったエルは少しだけ胸の奥があったかく感じた。
じゃあエル、あと一時間逃げ切ろう？
…うんっ。セラちゃんっ。
…僕、男なんだけど…。
え。
そんな会話をする二人を遠くから見る一人の人影があった。
……とうとうこの日が来ちゃったか………もう時間はなさそうね…。
エル…私はあんたを絶対に許さない。今のあんたは覚えていないだろうけど…これからどんな事が起きようと恨まないでね。
エイラはエルを睨み付ける。まるで恨みがあるかのように。
ワアアアアアアアアアアアアアッ！！
突然大きな歓声が鳴り響く。
え、な、何！？見つかっちゃったの！？
エルはとうとう見つかってしまったのかと慌てた。
違うよ、これはTWFで一番人気の格闘技エリアからの観戦だ。確かチラシで誰が戦うか出てたはず。
セラはポケットから折りたたまれたチラシを出して開く。
えっと…え！？エル！今日はすっごくラッキーだよ！
え！？
今からTWF格闘技で無敗を誇る銀狼のセツナ対昨日25連勝を制覇した烏天狗のエイラの戦いが始まるんだって！これはレアだよ！早く見に行こう！
セラはまた無理矢理エルの腕を掴めば格闘技エリアへと走り出す。
ま、またこのパターンなのおおおおお！！？
振り回されるエルはセラに助けを求めたのは間違いだったのではないかと疑い始めていた。
