第7話 大切な人と思い出の門

文字数 2,378文字

 この城から見える景色は、どこまでも続いている。左から右へ、右から左へと流れる風が、私の肌に触れる。
 私の名前は、グレン・パワフィー。この国を統一するお嬢様である。
 この国の名前は、ヘブン。文字通り、天国を意味する。この国に住む、私を含め、住民たちは、毎日楽しく過ごしている。

「皆の者! 今日も元気でありますか!!!」

 私は、城の窓から、住民に向けて言った。 
 大きく作られた城の窓からは、住民たちが楽しく生活する姿が良く見える。八百屋のおじちゃんは、趣味の釣りをして楽しんでいる。広がる畑で自家農園をしているおじちゃんは、近所のおじちゃんと会話を楽しんでいる。
 楽しそうに生活している住民が見られて、私は嬉しい!

「おはようございます! グレンお嬢様!」
「今日も美しい!」
「毎日ありがとう!!!」

 住民たちの声が聞こえる。
 私は、住民と会話をするのが一番好きだし、住民たちの声を聴くのも好きだ!
 今日も、平和な国だ。

「おはよう。グレン」

 さわやかな声が私を呼んだ。
 彼の名前は、ヴィトゥレェィアル。少し、名前が言いづらいからみんな、ヴィトゥと呼んでいる。

「おはよう! ヴィトゥ! 今日も変わらず元気だね!」
「そうだね。今日も美しい君に出会えたからね」

(エヘヘッ、美しいだなんて照れるな~)

 本人は、無自覚だと思うけど、私は無自覚なヴィトゥも大好き。
 私とヴィトゥは、幼いころからの知り合いで、幼馴染だ。私が、ヴィトゥの事が好きなのを住民たちも知っているが、私とヴィトゥが付き合っていることを住民たちは知らない。あえて、伝えていないのである。

「もう少しだね」
「そうだね」

 私とヴィトゥが付き合って今月で8か月。
 この国では、平均的に5か月ぐらい付き合ったら婚約の儀式をあげ、夫婦の関係になるのが一般的だ。しかし、とある人のせいで忙しく、スケジュールがなかなか合わなかった。
 しかし、来月の今日に休みを取ることが出来たので、その時婚約の儀式を挙げる。そして、その日が近くなったら、住民たちに知らせることにしたのだ。
 『トコトコ』と、足音がなった。この足音は、セバスチャンだ。

「お嬢様。おみみを」

 セバスチャンが、私の耳元で言った。
 セバスチャンは、私が幼いころからの仲良しだ。ほとんどの事は、許してくれるのだが、私とヴィトゥが付き合うと発表した時、唯一反対した。なぜか、未だにヴィトゥに対しあまり良い印象を持っていないらしい。

「え! また、現れたの!!!」
「お、お嬢! 声がでかいですよ!」
「ご、ごめん」

 私とセバスチャンは、小さな声で話し合う。

「どうしますか? ここまま野放しにしていたら、この国が崩壊してしまいます」
「ど、どうにかしますって! 私たちのモットーは、住民が楽しく平和に暮らせるようにすることでしょ! だから、早いうちにそのものを捕まえなさい!」
「かしこまりました」 
 
 そのものの名前は、レグン。
 ある日、突然現れては、この城に入り込み住民の情報などの機密情報を、短時間で盗んでいくため、誰も姿を知らない。ちなみに、名無しの状態だと、わからなくなるから、私がレグンと名付けた。

「ご、ごめんね。ヴィトゥ。これから、仕事入ちゃった」
「いいよ。グレンが帰ってくるまで待っているからさ」

 『ありがとう』と、私はヴィトゥに伝え、セバスチャンと一緒に仕事場に向かった。
 この城の最下層に存在しているこの仕事場。そこで働く人と一緒に、レグンに対抗するための作戦を立てた。
 すると、その瞬間、城が震えはじめ、『ドカンッ!』と爆発する音が聞こえた。
 私とセバスチャンは、急いでその爆発音が鳴った場所に向かった。

「ひ、ひどい!」

 辺り一面に広がる爆薬の匂い、崩れた瓦礫の山。壊されたのは、城の門だった。運よく、門としての原型を保っていたが、門としての機能は失っている。
 私の目から、涙が流れた。

「ひ、ひどい。一体、誰がこんなことを! しかも、内側から!」

セバスチャンは、怒っていた。
門の内側から壊されていて、門の内側に入れるのは、この城で働く人だけ。
 セバスチャンに連れられ、私は城の中で安全な場所に避難した。 
 あとから、聞いた話だが、『城のいろいろな場所に、使い終わった爆薬があった』と、セバスチャンは言っていた。
 
「そうか、大切な門が壊されたんだね。それは、悲しいね」
「うん」

 私は、ヴィトゥのそばで泣いていた。
 あの門は、私とセバスチャンが数年前に一緒に作ったものだ。一から木を切って、加工し、塗装を何か月もかけて作った門だった。
 気づいたら、私は寝ていた。
 
・・・早朝

 『ドタドタ』と、足音を立てて、私は向かった。
 城からかなり離れた一角に存在している審判の間。集まった住民たちの間を通りながら、私は、向かった。

「う、うそでしょ!」

 審議の間とは、国で罪を働いた者に対して判決を下す場所だ。
 顔に袋をかぶされ、両手を鎖でつながれた男が、審判の間に入場してくる。

「!!!」

 両手を鎖でつながれ、真ん中に存在しているポールにつながれた。
 
「せ、セバスチャン! 一体これは、どういうことなの!」
「・・・」
「せ、セバスチャン!!!」

 今回の事件を取り締まっているセバスチャンは、私の質問を無視した。
 右手で持った、ハンマーを高々と振り上げ、叩きつけた。

「お嬢様、お許しください」

 『ドンッ!』と、重たい音が広い会場内に響き渡る。
 警備の者たちが、かぶっている袋をはがした。

「あ、あ、あ!」
「これより! 先日の門を破壊した者の審議を始める!!!」 

 う、嘘だ! う、嘘だ! 絶対に、ありえない。
 も、門を破壊したのが・・・

「嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!」

『ドンドンッ!』と、ハンマーを叩きつける。

「ヴィトゥ! 貴様の審議を始める!!!」

 ヴィトゥだったなんて・・・。
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