第4話 牢獄の怪物 パート2

文字数 2,355文字

城の門を破壊した罪で、国家反逆罪と決まり、投獄入りした元お嬢様のグレン・パワフィー。
 投獄された先では、巨大な怪物が暴れており、牢獄中に人間の骨が数多く落ちていた。
 怪物に見つかり、攻撃を受けたグレン。背骨を骨折したグレンは、動けずにいた。 

「おじょうさま・・・。お嬢様・・・!」

 グレンは、誰かに呼び起された。

「ここは? 一体?」
「起きましたか? お嬢様・・・?」
「この声はまさか・・・! セバスチャン!!!」
「はい。セバスチャンでございます!」

 白い部屋の中にグレンとセバスチャン、2人だけ。
 
「でも、どうしてセバスチャンがここに! 審議の間にいるはずじゃ?!」
「審議の間? 私は、はじめからここにいましたよ!?」
「え?」
 
 セバスチャンは、ヴィトゥの策略に負けて、やってもいない罪でこの牢獄に収監されていた。
 
「ところで、この部屋は?」
「これはですね!!!」

 セバスチャンは、わくわくしながら言った。

「忘れていたのですが、この世界は異世界と呼ばれる世界らしいです」
「ふむふむ」
「そして、この異世界に住む者には、スキルと呼ばれる特殊能力が与えられるらしいです」
「スキル?」
「この部屋は、私のスキル、空間創造(ルームクラフト)で作られたものです」
「ルームクラフト?」

 グレンは、『異世界』、『スキル』、『空間創造』とセバスチャンが言った言葉を理解できていなかった。

「よ、よく理解が出来ません。異世界? スキル? 一体何がどうなっているのですか!」
「それよりも、お嬢様よくお聞きください。今、すべきことはなんだと思いますか?」
「それは・・・」
「国を守ることですお嬢様」
「どうやって?」
「レグンとヴィトゥを国外に追放するのです!」

 グレンは、セバスチャンの言葉に驚いた。
 裏切られたとは言え、ヴィトゥはグレンの彼氏だ。そんな簡単に裏切っていいわけではない。

「お嬢様、今は迷っている暇などございません」
「う、う~ん」
「お嬢様!」
「う、う~ん。う~」
「お嬢様! あなたは、この国のお嬢様ですよ! 貴方、お嬢様にとって、この国で一番大切なことは何だったですか?!」

 グレンは、しばらく悩んだ。お嬢様として決めるべきか、1人の女性として決めるべきか

「住民が楽しく平和に暮らせること!」

 グレンの口からすっと出た言葉。『住民が楽しく平和に暮らせること』とは、グレンの祖父母の時代から受け継がれる言葉である。
 グレンは、お嬢様として国を守る覚悟を決め、セバスチャンと共に牢獄に戻った。

「行きましょう! お嬢様!」
「うん!!! 行こう!」
「空間創造解除!」
 
 『ドスンッ! ドスンッ!』と、オークの足音が牢獄内に響き渡る。

「オークの足音だ」」
「お嬢様も出会ったのですね。オークに」
「うん!」
 
 セバスチャンとグレンは、お互いの背中を合わせながら道を進んだ。
 『バキッ!』と、折れる骨。
 
「とりあえず、今はここから出る事だけを考えてください!」
「りょ!」

 グレンとセバスチャンは、『バキッ! バキッ!』と骨を踏みながら、出口に向かって走った。2人の後を追うように、『バキッ! バキッ!』と骨が折れる音が、徐々に大きくなっていく。

「お嬢様! 来ましたオークです!!!」
「・・・」
「お嬢様!?」

 グレンは、『やるべきことは・・・』と小さな声で言った。
 
「やるべきことは! 住民たちのために、生還することよ!!!」
「お、お嬢様~!!!」

 グレンは、猛スピードで走り去った。
 『バキバキバキバキバキバキバキ!』と、骨が折れる音が牢獄内に響き渡る。
 骨が割れる音が、徐々に大きくなる。

「ま、まさか・・・。もう一体のオークが!」

 骨が割れる音が徐々に多く、近づいてくる。
 セバスチャンの顔の横を何かが通った。

「セバスチャン!!! やっぱり戦おう!」
「お、お嬢様!!! 戦うってどうやって行うのですか!?」
 
 セバスチャンの問いに、グレンは具体的なやり方を実践した。

「こうやって戦うの!!!」
 
 地面に落ちている折れた骨をひたすら投げつける。
 グレンの行動を真似して、セバスチャンもオークに向けて割れた骨を投げつけた。
 多少は、ダメージを受けているようだが、あと一歩致命傷にはならない。

「ギュルォォォッォォ!!!」

 オークは叫んだ後、猛スピードでグレンとセバスチャンに突っ込んできた。
 間一髪オークのタックルを交わしたグレンとセバスチャン。
 オークのタックルが壁に当たった。『ドッン!!!』と、重音が牢獄なに響き渡る。

「危なかったね」
「・・・」
「せ、セバスチャン!!!」

 セバスチャンの腕が、折れていた。 
オークのタックルを無事に交わしたように思われていたが、少しだけセバスチャンの腕に当たっていた。

「セバスチャン!!! 目を覚まして!」

 グレンは、セバスチャンを必死に呼び起こすが、反応は無い。
 セバスチャンの体温が、徐々に低くなっていく。『ドンッ、ドンッ』となる心音も徐々にタイミングが遅くなる。

「だめ、セバスチャン! 死んじゃダメ!!!」

 必死に心臓マッサージを行うグレン。しかし、心臓マッサージが完了する前に、セバスチャンの心音が止まった。心音が止まったことに気づいていないグレンは、必死に心臓マッサージを行う

「せ、セバスチャン! セバスチャン!!!」

 セバスチャンの体から体温が消え、心音も消えた。
 『ドンッ! ドンッ!』と、足音を立てながら近づいてくるオーク。
 壁に激突したせいか、右肩にすれたような傷がある。
 着ていた上着をセバスチャンの上にかけ、安全な位置に移動させた。

「私の今、やるべきことは、住民を安全で平和に暮らせる国を作ること。オーク! あんたを排除する!!!」
  
 グレンは、両手を前に広げスキルを発動した。

―破壊
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