第1話 大切な人ともの

文字数 2,350文字

 彼女の名前は、グレン・パマフィー。国を統一するお姫様である。
 彼女が統一する国の名前は、ヘブン。その名の通り、天国の意味を持つ国だ。
 彼女を含め、ヘブンに住む住民は争ったことが無く、毎日みんな楽しく過ごしている。
 
「皆の者! 今日も元気でありますか!」

 グレンは、言った。
 高々と作られた城の上から、楽しく生活する住民の姿見える。あるものは、趣味である釣りを楽しみ、あるものは、知り合いと笑いながら暮らしている。
 今日も、平和な国なのだ。

「おはようございます! グレンお嬢様!」
「今日も美しい!」
「まいにちありがとう!」
 
 住民たちの声が聞こえる。
 住民たちは、グレンの声を聴くのが好きだ。グレンも住民たちの声を聴くのが好きなのだ。
 平和な世界。

「おはよう。グレン」

 さわやかな声が聞こえた。
 彼の名前は、ヴィトゥレェィアル。少々、言いづらい名のため、皆からは、ヴィトゥと呼ばれている。

「おはよう! ヴィトゥ、今日も元気だね!」
「うん。今日も美しい君に出会えたからね」

 グレンは、顔を赤くした。
 グレンとヴィトゥは、幼いころからの幼馴染で、グレンがヴィトゥの事を好きなのを住民も知っている。
 しかし、グレンとヴィトゥが付き合っていて、恋人関係であることを住民は知らない。

「もう少しだね」
「そうだね」

 グレンとヴィトゥが恋人関係になって今月で8か月。
この国では、平均的に5か月恋人関係になったら婚約の儀式を行い夫婦の関係になるのが一般的だった。しかし、グレンは国のお嬢様であるため、忙しくスケジュールがなかなか合わなかったのだ。
朝からイチャイチャする2人。

「お嬢様。おみみを」

 執事のセバスチャンが、グレンの耳元で何かを言っている。
 セバスチャンは、グレンが小さいころから面倒を見ている。ヴィトゥと付き合うと発表した時、唯一反対した。その時は、必死に話し合い認めてもらったが、いまだにヴィトゥに対してあまりいい印象を持っていない。
 
「なに! また、現れたの!」
「お嬢! 声がでかい!」
「ご、ごめん!」

 セバスチャンとグレンは、小さな声で話し合っている。

「どうします? このまま野放しにしていたら、この国が崩壊せざる負えません」
「どうしますって、一番は住民が楽しく平和に暮らせること。だから、早いうちにそのものを捕まえなさい!」
「かしこまりました」

 そのもの名は、レグン。
 突然現れては、この城に入り込み機密情報を盗んで行く。短時間で行われるため、レグンが盗んでいるところを誰も見たことはない。

「ごめんね、ヴィトゥ。これから、仕事入っちゃった」
「いいよ。君が帰ってくるまで待っているから」

 グレンとセバスチャンは、仕事場に向かった。
 ちょうどその日の、夕方の頃である。城の門が何者かの手によって破壊されたのである。
 グレンとセバスチャンは、急いで現場に向かった。

「ひどい、一体だれがこんなことを」
 
 使い終わった爆薬の匂いが、あたり一面に広がる。
 門の原型をとどめてはいるが、門としての機能はしていない。
 グレンは、泣いた。

「一体、誰がこんなことを。しかも、”内側”から」

 門より内側に入れるのは、グレン、ヴィトゥ、セバスチャン、その他従業員のみ。
 セバスチャンは、グレンを安全な場所に待機させ、城の内部を調べると使い終わった爆薬が、場内のいろいろな場所から見つかったのである。
 セバスチャンは、怒っていた。なぜなら、あの門は、グレンが幼いころに、セバスチャンと一緒に作ったものだから。
 『グスンッ』と、グレンは泣いている。

「どうしたのグレン。君が泣くなんて」
「あのね、ヴィトゥ。私が、昔作った門が壊されたの」
「なんだって!!!」

 ヴィトゥは、驚いた。
  
「今、セバスチャンが犯人を捜しているみたい」
「そうか。早く見つかるといいね」
「うん」

 ヴィトゥとグレンは、その日一緒に寝床についた。
 深夜、満月の光がグレンたちの寝床を照らしている。
 場内を歩き回る物陰があった。

「おやおや、どこに行くのかな? 場内は、夜は関係者以外立ち入り禁止ですよ」
「・・・」
「おや、あなたは関係者だったものではないですか。先ほどの爆弾は貴様のせいか」
「貴様だなんて、セバスチャン。貴様とは呼ばないで。私の名前を知っているでしょ?」
「やっぱり、あなたがあのようなことを・・・」
「あんたは、知りすぎた。グレンの事も、そして、俺のことも」
「本性に、出会うことが出来てうれしいです」

 セバスチャンは、怒っていた。
 グレンだけではなく、セバスチャンにとっても思い出のある門をこんな奴に壊されたのだから。
 満月が消え、太陽が上がってきた早朝、グレンは急いでいた。

「ど、どいて!」
 
 グレンは、見に来た住民をかき分け審判の間に向かった。
 審判の間は、城からかなり離れた場所にある。国で罪を働いたものに判決を言い渡す場所だ。

「セバスチャン! なんで、嘘でしょ! どうして!」
「・・・」
 
 セバスチャンは、グレンの問いを無視した。
 黒い正装を着て、胸元の天秤のマークが書かれたバッチをつけている。
 
「静粛に! 今からこのものの裁判を始める!」
「嘘だ・・・。冗談でしょ!」
「お嬢様、冗談ではありません」

 審判の門につながる大きな門が開き、数人の警備の者に連れられた犯人が入ってくる。

「嘘だ! やめて!」

 両手足に鎖をはめ、逃げられないようにしてから警備の1人が顔に掛かっている袋を取った。

「や、やめて!」
 
 グレンは、叫ぶが袋を取るのをやめない。
 袋が完全に取れたころ、門を破壊した犯人の姿が完全に見えた。
 
「う、嘘だ。嘘だ! ヴィトゥは、やってない!!!」
「ごめんね、グレン」

 少年は、言った。
 門を爆弾で破壊した犯人は、ヴィトゥだった。
 
 
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