第3話 牢獄の怪物 パート1

文字数 1,651文字

 ヘブンと呼ばれる異世界一幸せの国があった。その国を統一するのは、グレン・パワフィーと呼ばれるお嬢様だった。
 グレンには、ヴィトゥ(ヴィトゥレェィアル)という、彼氏がいた。しかし、先日起こった城の門が爆弾で破壊される事件の主防犯として、ヴィトゥが捕まった。
 審議にかけられるヴィトゥの無罪を、グレンは必死に訴えた。しかし、ヴィトゥの証言と証拠によって、レグンの正体がグレン言われ、グレンが捕まり、奥深く暗い牢獄に入れられた。

「暗い! どこ、誰か居ないの!」

地下30階。この牢獄は、地上で悪い罪を働いた者が入る場所。
ヘブンでは、ここ数十年罪を働いた者がいないため、その場にはグレンしかいない。
 グレンは、誰かを探そうと牢獄の中を歩き回る。『カラカラッ』と、音が鳴った。

「だ、誰? 誰か居るの? いたら返事をして!」
「・・・」
 
 グレンの呼び声に返答がなかったため、『カラカラッ』と音が鳴った方に向かった。
 歩くたびに、地面の方から『バキッ! バキッ!』と、何かが割れる音が聞こえる。

「これは! 人の骨!!!」

 『バキッ! バキッ!』と、なる正体は人の骨だった。
 本来、人の骨の構成物質はカルシウムなので、そう簡単に割れない。踏んだだけで、割れるということは、かなり古いものなのだろう。

「でも、待っておかしい! こんなに人の骨は太くない!!!」
 
 暗い牢獄の中だから、どのくらいの長さかわからなかった。しかし、その骨は巨木ぐらいの太さがあった。

「どうして。この世界には人以外がいるとでもいうの!?」

 グレンは、驚いた。
 巨木ぐらいある骨を地面に置いた。
 『バキッ! バキッ!』と、骨が折れる音が聞こえる。暗く広い牢獄のせいか、『バキッ! バキッ!』と割れる音が、あたり一面に反響する。

「バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ!!!」

 骨が折れる音の反響が徐々に強くなってくる。
 さらに、『ドンッ!』と力強い何かが聞こえてくる。

「だ、誰!?」

力強い足音が止まった。

「ほ、ほんとにだ・・・?」
「ウォ~!!!」
「!!!」

 『バキッ!バキッ!』と骨を割りながら、猛スピードで突っ込んでくる。
 異常なほど伸びた身長、巨木な物筋肉、巨木を加工した棍棒を振り回している。

「あ、あ、あぁ・・・」

 グレンは、腰を抜かしてうまく逃げることができない。
 腰から何かをぶら下げている。

「あ、そ、それは・・・!」

 それは、セバスチャンの上着だった。
 暗い牢獄の中だったが、グレンはいつも見ているため、すぐに分かった。

「まさか! この牢獄にセバスチャンが!!!」

 セバスチャンがいるかもしれない。その希望を胸にグレンは立ち上がった。
 
「ここを抜け出すまで私は死ぬわけにはいけないの!!!」
 
 喧嘩をしたことが無いグレンは、喧嘩の仕方がわからなかった。戦っても勝てないと考えたグレンは、その場から逃げた。
 『バキバキ!』と、音を立てて逃げるグレン。
 『バキッ! バキッバキッバキバキバキ!』と、音を立てながらグレンを追う。

「い、一体どこまでついてくるのですか!」

 どこまでも、ついてくる怪物。
 怪物は、地面に置いてある骨を何個も持ちあげ、グレンに投げつけた。
 ものすごい速さで投げられた骨が、グレンの背中に当たった。

「イッ!」

 『グシャッ!』という音が、グレンの背中から出た。背骨が完全に折れていた。
 グレンは地面に倒れた。

「逃げなきゃ、逃げなきゃ!」

 グレンは、その場から逃げることに必死だった。
 足を始めに、体の感覚がなくなってくる。折れた骨が、太ももに刺さってもグレンは、気づかずその場から逃げることに必死だった。

「グシャ!!!」

 怪物の咆哮。

 『バキッ!』と、大きな音を立ててグレンに近づいてくる。
 怪物は、持っていた棍棒を振りかぶった。

「た、助けてセバスチャン!」

 グレンは、叫んだ。
 怪物は、棍棒を振り下ろした。
 死を覚悟したグレン。振り下ろされる棍棒を前に、反射的に目を閉じた。
 
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