第5話 牢獄の怪物 パート3

文字数 2,732文字

 セバスチャンが言った『スキル』が、どのようなモノか、グレンはわからなかった。
 オークの目に見えないほど早いタックルで、バスチャンの腕が複雑に折れ、その場に倒れてしまった。オークを倒さなければ、地上に出ることはできない。
 オークの振りかぶった棍棒が、グレンに当たる瞬間、無意識にスキルを発動させたので会った。

―破壊!!!

 グレンの両手から、ナメクジよりも黒い球体が放出された。
 オークは、黒い球体を持っていた棍棒で打ち返した。
 『バキッ!』と、大きな音を立て、棍棒がわれた。

「今だ!」

 グレンは、オークが驚いている隙を見て、出口へ向かった。
 さっきまで、足元にあった人の骨が粉上に粉砕されていて、歩きやすかった。

・・・

 出口まであと、数十メートルの地点で、グレンの体に異変が起きた。
 
「ハッ ハッ ハッ」

 急に、呼吸が困難になったのである。
 それは、スキルを過度に使用した反動によるものだった。
 グレンのスキル「破壊」は、とても強力だ。両手を前に広げるのが発動条件である。両手から放出される黒いボールの大きさが、大きければ大きいほど威力が強くなっていく。しかし、その分スキルによる反動もでかい。

「い、いきが・で、でき・・ない」
 
 先ほど、無意識に出した球体ほどの大きさの破壊を使用するには、数十年以上の鍛錬を行う必要がある。徐々に徐々に出せる大きさを増加して、初めてあれほどの大きさを出せるのである。
 グレンは、このことを知らずスキルを使用したことにより、スキルを過度に使用した反動によって、呼吸が出来なくなったのだった。
 『バタッ!』と、音を立てて倒れた。
 しばらくの間、息を吸えず、体を動かすことが出来なかった。
 『ドスドスドス!!!』と、大きな足音を立ててオークが向かってくる。

「に、にgなきゃ!」

 グレンは逃げようと必死に体を動かすが、数ミリ程度しか動くことができない。
 『ドスドスドス!』というオークの足音が消えた。
 オークの「殺す」という、殺意が牢獄中に広がる。

「に、にgなきゃ!」

 後ろにいるオークに背を向けて、グレンはゆっくりと出口を目指した。
 徐々にスキルを使った反動が緩まっていくグレンは、ひたすら出口を目指した。
 
「に、逃げなきゃ!!!」

 手足の反動が完全に収まったグレンは、使える力を全部使ってひたすら出口を目指した。
 オークもその後ろを『ドスドス!』と、大きな足音を立てながらグレンを追う。 
 グレンの『はぁ、はぁ、はぁ』と、空気を吸う音と、オークの『ドス! ドス! ドス!』と、力いっぱい地面を踏み潰す音が牢獄内に響く。

「あと、少し。あと、少し!」

・・・出口まで、残り5m

 暗い牢獄の中から、徐々に出口が見え始まる。
 グレンは両手を交互に力いっぱい振り、両足を交互に出して力いっぱい地面を踏んだ。グレンとオークの距離が広がる。

「よし、いける!!!」

・・・出口まで、残り0m
 
 グレンの手が出口のレバーに触れた。レバーを下げ、力いっぱい出口を押した。
 『ガシャン!』と、出口から音が鳴った。

「ひ、開かない!!!」

 出口の扉に、鍵かかかっていた。
 グランは、何度も出口のレバーを下げた。『ガチャ! ガチャ!』と出口から出ている突起が塀に当たる音が、牢獄中に広がる。
 『ドスン! ドスン!』と、オークが近づいてくる。右手には、人間の骨をつぶして作られた棍棒を持っている。

「ウォオウオォゥォウ!」

 オークが叫んだ。
 手に持っている棍棒を左右に振り、『ブンッ! ブンッ!』と、音を立てながらグレンに近づいていく。
 
「こ、来ないで!!!」

 グレンは、出口のレバーから手を離し、両手を前に突き出した。
 
―破壊!!!
 
 スキルを発動させた。
 グレンの両手から小さな球体が放出される。ゆっくりとオークに近づいていく。
 オークは棍棒をかつぎ、無造作に振り回した。『ブンブンッ!』と、空気を切る音が聞こえる。
 『バキンッ!』と、音を立て、オークの棍棒が割れた。
 
「ハッ! ハッ!」

 グレンは、オークがスキルで発動させた球体に夢中になっている間に逃げたのだった。
 1回目と違い、スキルを使用しても少しの息切れと大きなダメージはなかった。
 しばらくたった時に、グレンは気づいた。先ほどから、オークの足音と声が聞こえないことに。

「や、やったのか?」

 オークの声が聞こえないからか、グレンはその場で数分の休憩を取った。
 まだ、スキルに体が慣れていないグレンは、ものすごい勢いで空気を吸った。
 オークに襲われる心配がないためか、グレンの緊張がほどけた。『グー、グー』といびきをかいている。何か、幸せな夢を見ているせいか、グレンは笑顔だった。
 
・・・数十分後
 
 グレンは、ゆっくりと目を開けた。少々寝ぼけているようだった。
 『コツン、コツン』と、牢獄の中に響いた。
 グレンは、音が鳴る方向に振り向いた。すると、1人の紳士が見えた。口元はひげ、整えられた髪型。

「せ、セバスチャン!!!」

 グレンは、歩いてくるセバスチャンに近づき、セバスチャンもグレンの姿に気づき近づいた。
 オークとの闘い前は、どこか甘さのあったグレンだったが、オークと命のやり取りをしたことによって、覚悟の決まったグレンを見て少し誇らしげだった。
 グレンとセバスチャンは、ともにオークの持っている服と牢屋のカギを奪いに向かった。
 
「セバスチャンが、まさか生きていたなんて」
「・・・」
「セバスチャン?」
「・・・」

 何も言わないセバスチャン。グレンとセバスチャンは、オークが倒れたと思われる場所に向かった。しかし、そこにオークの姿が無かった。
 『グチャグチャ』と、何かが変化していく音がグレンの隣からきこえた。

「お、oじょう、おじょうs、おじょうぁま」
「・・・!!!」

 セバスチャンの肉体が、徐々に変化していく。着ていた服が、大きくなる筋肉によって『ビリビリ』と音を立てて破れていく。
 グレンよりも大きな身長。右手に生成されたのは、人の骨で作られた棍棒。

「オーク!!!」

 グレンとオークが目を合わせた。両者とも、殺る(やる)つもりだ。
 グレンは、両手を前に広げ、オークは、棍棒を振りかぶった。
 最初に、動いたのはグレンだった。

―破壊!!! 

 最大火力の破壊の球体は牢獄の縦幅ギリギリだった。ゆっくりと、破壊の球体がオークの顔面に当たり始めた瞬間、『バン!』と爆音と爆発が起こった。
 爆発の影響で、あたり一面に煙が広がるなかで、スキルの反動でもがき苦しむグレンが見たのは、傷1つついていないオークの姿だった。

「グレン・パワフィー。オ前ハ、ココデ終ワリダ!」

 オークは、そう言い放ち、グレンの首元を持ち上げた。
 
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