第9話
文字数 2,541文字
銃の演習を終え、僕達は再び本拠地たる休憩室に帰還した。
「歓迎会と洒落込もう!」
伊東が僕達を迎えた、
テーブルにはポテトチップスやコーラ、ナポリタンスパゲティやカレーが並べられていた。
「しょ、食料ってあるんすか!?」
「まぁね、そこに食堂あるからさ。あと2階にコンビニがあるんだよね。」
確かにこの休憩室には食堂が併設されているが...コンビニ?
「ちなみにカレーはぼくと夜野さん謹製だよぉ〜」
夜野を見るとグッドサインを僕らに突きつけていた。
「なんなら探索した倉庫には必ずコンビニがあるからね。加えて備蓄倉庫も各倉庫の敷地外に確認済だ。」
「アタシも酒には困らないってことよ!」
なるほど...瑠璃華は一体どこから酒を持ってきたのか謎だったがそのコンビニからのものなのだろう。なんだか至れり尽くせりな異界だと思えるのは僕だけだろうか。
「では、れっつぱーてぃ!」
「啓司の世界はどうなってるの?スマホがないって言ってたけどさ。」
ジェーンがカレーをバグバグ頬張りながら聞いてきた。
「まぁ、そのスマホとやらの代わりに物理ボタンのケータイがあるだけだよ。その他は普通じゃないか?」
ジェーンは記憶喪失なのにスマホとやらは知っているんだよな。名前を忘れても言語を忘れないように、社会常識や一般知識は忘れないようなものなのだろうか。
「でも興味深いでござるよ。2019年なのにスマホが存在しない世界とはwwww。」
「2019年って言うと、アタシはコロナ直前としか思えねェなァ。オリンピック直前ともいえるかァ。」
「オリンピック!そう言えばそのウイルスが流行してるのにオリンピックやったんですか?」
「やらなかったな。21年に延期されたのよォ。」
「20年以降はろくなことが無さそうですね...」
まぁ、全員パラレルワールドから来てる可能性が高いので僕の世界でそれらが起こるとは限らない。
「ワンチャンオレが感染してて皆に移したらどうしましょっ。」
冗談めきながら宏太が言っている。みんな青ざめている。
「コロナが異界まで着いてくんのか?そらもう疫病神を超えた何かダロォ!」
瑠璃華がそう言うと、青ざめたみんなに笑みが浮かんだのだった。
宴は終わり、皆各々好きなことをし始めた。
「というか時間ってどう計ってるんですか?」
僕は伊東に聞いてみた。
「スマートホンを見てみて。」
渡されていたスマホをスリープ状態から解除すると、2023年12月31日22時0分、と表示されていた。
対して僕の腕時計は23時18分を指していた。誤差は比較的少なかったようだ。
「一応このスマホの時間で朝昼夜を区別しているよ。作戦における時間もこれだね。」
確かに太陽も月もなく、永遠に真っ暗なここではそうせざるを得ない。しかもメンバー全員が違うパラレルワールドから来ているので全員の時計がバラバラだと探索時にも問題が発生するだろう。
「明日は9時から作戦開始だから、まだ余裕はあるけどしっかり眠っときなね?あとシャワーはあそこにあるからねぇ。」
休憩室内になんとシャワーがあった。宅配倉庫というのに休憩室に食堂があるまではなんとなく知っていたが、シャワーまであるのは知らなかった。恐らく作業員やドライバーが夏は地獄のどこから持ってきたのかわからないが、寝袋を貰った。
「至れり尽くせりだなぁ。」
なぜか僕が敷いた寝袋の横にジェーンも敷いている。
「ちょ、おま、こんな近づいて寝れるんか?男の横で?」
「へへへ。いいじゃないかい?なんかあったらこの空間には警察もいるし!」
「...そういうもんか?」
ジェーンは微笑んだ。やっぱりこの顔、どこかで見た気がする。少なくともクラスメートではないが、校内ですれ違ったりしたことが結構あったのかもしれない。しかし、こいつはスマホの事を知っていた。僕の世界で存在しないスマホを知っているってことは即ち別世界から来たということだ。あくまで僕の世界におけるジェーンをどこかで見たかもしれないに過ぎないのかもしれない。
「啓司ならそんなことしないでしょ。なんか君は陰キャな感じがするしね。」
やはりずかずかと失礼なことを言う女だ。
「ここが異界なんて...君は信じられる?」
ジェーンは仰向けに寝転がりながら言った。
「状況から察するにそうとしか思えないが。信じ難いのはある。」
「記憶がないのに『異界』に迷い込んだのが異常な事と理解できるっていうの。不思議だなぁ。」
「スマホ知ってたしな。」
「そうだよねぇ。なんで自分に関する記憶だけすっぽ抜けてるのかなぁ。」
そして、ジェーンは少し暗い面持ちになった。
「記憶が戻ったら私って。記憶のない今の私の人格は消えるのかな?」
確かに。彼女は己の過去をすっぽりなくしている。過去の積み重なりが人格を作る。その過去を無くした時表出する人格と積み重なった過去の上にある人格は同一とは言い難いだろう。
儚げに天井を仰ぐ彼女に、その質問への返答を僕はできなかった。
しばらくしてほとんどのメンバーが床についた。そのために電灯は消された。
「瑠璃華ちゃんってウワバミだよねぇ。」
伊東の上ずった声が聞こえる。真っ暗の中瑠璃華とまだ呑んでいるようだ。
「カシラも人のこと言えるかァ?ひっく。まぁ貴方は酔っ払うとふわふわした性格が加速するよなぁ。」
異界に来てるのに、帰れるかわからないのに。楽しんでいるな。
まぁどうでもいい。ひとまず寝なくては。
僕は目を瞑る。
僕は目を覚ます。完全に寝ていた。朝かと思って時間を確認するが、まだ3時だった。
「zzzzzZ。」
みんなのいびきが聞こえる。早く起きすぎた。二度寝しよう。
再び目を瞑ろうとした時、人影が見えた。
誰だ?誰かがトイレに行こうとしているのかな?そう思ったものの。その人影はトイレとは逆方向の、このベースの閉じられたシャッターに向かっているようだ。
?こんな時間に一人で出るのは危険では?目を凝らしてよ~く人影を観察する。
それは。その人影は。
夜野だった。
夢遊病かな?と思ったものの、何かワケがあるのかもしれない。
僕は見なかったことにして再び目を閉じた。
「歓迎会と洒落込もう!」
伊東が僕達を迎えた、
テーブルにはポテトチップスやコーラ、ナポリタンスパゲティやカレーが並べられていた。
「しょ、食料ってあるんすか!?」
「まぁね、そこに食堂あるからさ。あと2階にコンビニがあるんだよね。」
確かにこの休憩室には食堂が併設されているが...コンビニ?
「ちなみにカレーはぼくと夜野さん謹製だよぉ〜」
夜野を見るとグッドサインを僕らに突きつけていた。
「なんなら探索した倉庫には必ずコンビニがあるからね。加えて備蓄倉庫も各倉庫の敷地外に確認済だ。」
「アタシも酒には困らないってことよ!」
なるほど...瑠璃華は一体どこから酒を持ってきたのか謎だったがそのコンビニからのものなのだろう。なんだか至れり尽くせりな異界だと思えるのは僕だけだろうか。
「では、れっつぱーてぃ!」
「啓司の世界はどうなってるの?スマホがないって言ってたけどさ。」
ジェーンがカレーをバグバグ頬張りながら聞いてきた。
「まぁ、そのスマホとやらの代わりに物理ボタンのケータイがあるだけだよ。その他は普通じゃないか?」
ジェーンは記憶喪失なのにスマホとやらは知っているんだよな。名前を忘れても言語を忘れないように、社会常識や一般知識は忘れないようなものなのだろうか。
「でも興味深いでござるよ。2019年なのにスマホが存在しない世界とはwwww。」
「2019年って言うと、アタシはコロナ直前としか思えねェなァ。オリンピック直前ともいえるかァ。」
「オリンピック!そう言えばそのウイルスが流行してるのにオリンピックやったんですか?」
「やらなかったな。21年に延期されたのよォ。」
「20年以降はろくなことが無さそうですね...」
まぁ、全員パラレルワールドから来てる可能性が高いので僕の世界でそれらが起こるとは限らない。
「ワンチャンオレが感染してて皆に移したらどうしましょっ。」
冗談めきながら宏太が言っている。みんな青ざめている。
「コロナが異界まで着いてくんのか?そらもう疫病神を超えた何かダロォ!」
瑠璃華がそう言うと、青ざめたみんなに笑みが浮かんだのだった。
宴は終わり、皆各々好きなことをし始めた。
「というか時間ってどう計ってるんですか?」
僕は伊東に聞いてみた。
「スマートホンを見てみて。」
渡されていたスマホをスリープ状態から解除すると、2023年12月31日22時0分、と表示されていた。
対して僕の腕時計は23時18分を指していた。誤差は比較的少なかったようだ。
「一応このスマホの時間で朝昼夜を区別しているよ。作戦における時間もこれだね。」
確かに太陽も月もなく、永遠に真っ暗なここではそうせざるを得ない。しかもメンバー全員が違うパラレルワールドから来ているので全員の時計がバラバラだと探索時にも問題が発生するだろう。
「明日は9時から作戦開始だから、まだ余裕はあるけどしっかり眠っときなね?あとシャワーはあそこにあるからねぇ。」
休憩室内になんとシャワーがあった。宅配倉庫というのに休憩室に食堂があるまではなんとなく知っていたが、シャワーまであるのは知らなかった。恐らく作業員やドライバーが夏は地獄のどこから持ってきたのかわからないが、寝袋を貰った。
「至れり尽くせりだなぁ。」
なぜか僕が敷いた寝袋の横にジェーンも敷いている。
「ちょ、おま、こんな近づいて寝れるんか?男の横で?」
「へへへ。いいじゃないかい?なんかあったらこの空間には警察もいるし!」
「...そういうもんか?」
ジェーンは微笑んだ。やっぱりこの顔、どこかで見た気がする。少なくともクラスメートではないが、校内ですれ違ったりしたことが結構あったのかもしれない。しかし、こいつはスマホの事を知っていた。僕の世界で存在しないスマホを知っているってことは即ち別世界から来たということだ。あくまで僕の世界におけるジェーンをどこかで見たかもしれないに過ぎないのかもしれない。
「啓司ならそんなことしないでしょ。なんか君は陰キャな感じがするしね。」
やはりずかずかと失礼なことを言う女だ。
「ここが異界なんて...君は信じられる?」
ジェーンは仰向けに寝転がりながら言った。
「状況から察するにそうとしか思えないが。信じ難いのはある。」
「記憶がないのに『異界』に迷い込んだのが異常な事と理解できるっていうの。不思議だなぁ。」
「スマホ知ってたしな。」
「そうだよねぇ。なんで自分に関する記憶だけすっぽ抜けてるのかなぁ。」
そして、ジェーンは少し暗い面持ちになった。
「記憶が戻ったら私って。記憶のない今の私の人格は消えるのかな?」
確かに。彼女は己の過去をすっぽりなくしている。過去の積み重なりが人格を作る。その過去を無くした時表出する人格と積み重なった過去の上にある人格は同一とは言い難いだろう。
儚げに天井を仰ぐ彼女に、その質問への返答を僕はできなかった。
しばらくしてほとんどのメンバーが床についた。そのために電灯は消された。
「瑠璃華ちゃんってウワバミだよねぇ。」
伊東の上ずった声が聞こえる。真っ暗の中瑠璃華とまだ呑んでいるようだ。
「カシラも人のこと言えるかァ?ひっく。まぁ貴方は酔っ払うとふわふわした性格が加速するよなぁ。」
異界に来てるのに、帰れるかわからないのに。楽しんでいるな。
まぁどうでもいい。ひとまず寝なくては。
僕は目を瞑る。
僕は目を覚ます。完全に寝ていた。朝かと思って時間を確認するが、まだ3時だった。
「zzzzzZ。」
みんなのいびきが聞こえる。早く起きすぎた。二度寝しよう。
再び目を瞑ろうとした時、人影が見えた。
誰だ?誰かがトイレに行こうとしているのかな?そう思ったものの。その人影はトイレとは逆方向の、このベースの閉じられたシャッターに向かっているようだ。
?こんな時間に一人で出るのは危険では?目を凝らしてよ~く人影を観察する。
それは。その人影は。
夜野だった。
夢遊病かな?と思ったものの、何かワケがあるのかもしれない。
僕は見なかったことにして再び目を閉じた。