UNKNOWN USER Ⅰ
文字数 2,399文字
???????
???????
目を覚ます。あたま痛いぃ。ここどこぉ。
ゆったりと体を起こす。視界がはっきりしてくる。
そこに広がっていたのは。
一本の道路と、
両端にでかい倉庫が建っている。
そんな光景が地平線の彼方まで続いている。
!
そこでようやく私は道路のど真ん中で寝ていたのに気付いた。やべっ。轢かれちゃうよ。
私は慌てて立ち上がり、歩道に移動する。
はぁ。ここどこぉ!見渡す限りおんなじ外観の倉庫、倉庫、倉庫!ここは港湾の倉庫街か!
ったく。ついでに真っ暗だし。夜かよ。
夜。夜?
私は空を見上げた。
そこには道路という天井が遥か高くに広がっていて。やはり逆さまに倉庫が永遠に連なっている。夜空がない!なんだこれ!
重力どうなってんの?なんで空に道路があるの?倉庫も屋上がこちらの地面に向かって伸びている。四角形の上辺と底辺に独立した重力があって、それに従って世界も広がっているようだ。き、きもい。ありえない。まだ酔っ払ってんのか私?
これ、私統合失調症になっちったぱたーん?
最後の記憶も曖昧だ。
記憶喪失になってないよな。
私の名前は...青井 七海。20歳。大学生。文学専攻。よしよし。ダイジョーブ。頭は無事だ。
しかしどうしてここにいてどうやってここに来たのか全くわからん。どこかで飲みすぎたかな?さまよい歩いた挙げ句ここに流れ着いたかなぁ。なんか頭痛いよ...
とりあえずここどこか知りたいし、おうちに帰りたい。
私は手近の倉庫の入口の自動ドアを目指した。
入った途端に強烈な違和感を覚えた。そこにはお客様受付と看板があるカウンターがあり、その奥に事務用のデスクやパソコンが並ぶ。しかし。しかし。
人が、いない。
入れたし明かりついてるし。なんか妙に生暖かい様な。さっきまで人がいたような感覚も覚える。だからこそ違和感を強烈に感じた。
「すみませーん!」
とりあえず叫んだ。
しかし返って来るのは静寂のみ。
どうしたものか。どうしたものか!
隣の倉庫、覗いてみるか。
その後私は数え切れないほど多くの倉庫の中に入った。しかしことごとく無人だった!
「ひぇぇ。もぅ30は回ったよぉ。」
回っていく内にわかったのは、永遠に続くこの倉庫は同じ会社のもののようだということ。まぁおんなじ外観だから薄々わかってはいた。しかし、内装もそっくりそのままおんなじなのだ!まるで建物ごとコピーしてる様にも思える。
加えて何度も空を見上げてもあの異常な光景はやっぱりある。目が痛くなるほどこすってもやっぱり重力逆さま世界が見えた。
はぁ。もう何個目の倉庫かわからない。不安は増殖する。自動ドアが開き、中の様子が見える。
無人だろうな。そう思い込んでいた。
しかしそこには、人がいた。
人。女。若い。だらしなくボサボサのロングヘア。ちょっと太り気味な体つき。よく見ると目が大きく、ガチれば美人に見られそうなその風貌は。
私だ。そこに私がいる。
え?嘘でしょ。ど、どっぺるげんがー?
もう一人の私は、ニヤニヤと嗤っていた。そしてポシェットの中からギラギラ光るナイフを取り出す。
そして、切りかかって来た。
回避できない強烈な悪意は私の体を刻んだ。胸あたりを切られたのだ。
「うぅ。あうっ。」
血が。血が出る。痛い。痛い!
でもまだ、幸運にも傷は浅い。逃げなきゃ。逃げなきゃ。おうちに帰りたいよ。私が何をしたっていうの。
激痛に涙をポロポロこぼしながら、出血もポタポタこぼしながら自動ドアが開いた瞬間外に出る。
「だれかぁ。だれかぁ!」
力ない叫びは虚しく響く。無人。
道路に出て、走る。
しかし上手く走れない。
後ろをちらりと見る。
そこには、先程の。もう1人の私が。
ナイフを今、私の背中に突きつけようとしてい。
「アアアアア!」
背中にナイフが刺された。熱い。痛い。痛い。嫌だ。なんで。
経験したことのない痛み。グロテスクな感触。
「きゃはははは!」
もう1人の私は嗤っていた。なんだこいつは。目がいっちゃってる。怖い。怖い。全身の激痛と、戦慄が混ざり合う。気持ちが悪い。うぇぇ。
「お前誰だよぉ!やめてよぉ!」
情けない声で叫んだ。するとやつは
「ふへへへ。ふひひひひひひひ。」
壊れた機械のようによくわからないことを言っている。
このままでは。このままでは。
こいつに殺られる。
本能的な行動だった。
私はやつにタックルしていた。
不意をつかれたようでやつは体制を崩し、頭をアスファルトに打ちつけた。
やつは完全に倒れた。すかさず私はナイフを奪う。
「舐めやがって。舐めやがってぇぇぇ!」
私の中にはもう怒りしかなかった。恐怖は消えていた。殺られるなら殺るしかない。人間的理性から動物的野性へと、OSが切り替わったような感覚。
躊躇せず私はやつの喉に。
ナイフを突き立てた。
鮮血が飛び散り、私は真っ赤に染まる。
やつはとうに意識を失っていて、私は呆然とする。急に理性が戻ってきたようだ。
人を、初めて刺した。
手が急に震えてきて、さっきまでの自分が恐ろしくなって。
「あ、うぅ。もうやだ。いやだ。嫌だ。帰りたい。おうちに帰る。」
自分でも何言ってるかわからないままやつから私は離れようとする。やつは喉にナイフが刺さり、淡々と血は吹き出している。血溜まりが出来始め、もうやつが生きていないことは明らかだ。自分と同じ顔のやつが死んでいる!その光景はどこか冒涜的に感じられた。
もうなにがなんだかわからないし、考えたくもない。体の裏表には激痛が未だ走っている。己も流血が激しい。
私は力尽きて倒れる。
薄れゆく意識の中で。
ゾンビのように立ち上がったもう1人の私が。
喉にナイフが突き刺さった私が。
拳を振り下げようとする様子が見えた。
こうして私は、生涯を終えた。
???????
目を覚ます。あたま痛いぃ。ここどこぉ。
ゆったりと体を起こす。視界がはっきりしてくる。
そこに広がっていたのは。
一本の道路と、
両端にでかい倉庫が建っている。
そんな光景が地平線の彼方まで続いている。
!
そこでようやく私は道路のど真ん中で寝ていたのに気付いた。やべっ。轢かれちゃうよ。
私は慌てて立ち上がり、歩道に移動する。
はぁ。ここどこぉ!見渡す限りおんなじ外観の倉庫、倉庫、倉庫!ここは港湾の倉庫街か!
ったく。ついでに真っ暗だし。夜かよ。
夜。夜?
私は空を見上げた。
そこには道路という天井が遥か高くに広がっていて。やはり逆さまに倉庫が永遠に連なっている。夜空がない!なんだこれ!
重力どうなってんの?なんで空に道路があるの?倉庫も屋上がこちらの地面に向かって伸びている。四角形の上辺と底辺に独立した重力があって、それに従って世界も広がっているようだ。き、きもい。ありえない。まだ酔っ払ってんのか私?
これ、私統合失調症になっちったぱたーん?
最後の記憶も曖昧だ。
記憶喪失になってないよな。
私の名前は...青井 七海。20歳。大学生。文学専攻。よしよし。ダイジョーブ。頭は無事だ。
しかしどうしてここにいてどうやってここに来たのか全くわからん。どこかで飲みすぎたかな?さまよい歩いた挙げ句ここに流れ着いたかなぁ。なんか頭痛いよ...
とりあえずここどこか知りたいし、おうちに帰りたい。
私は手近の倉庫の入口の自動ドアを目指した。
入った途端に強烈な違和感を覚えた。そこにはお客様受付と看板があるカウンターがあり、その奥に事務用のデスクやパソコンが並ぶ。しかし。しかし。
人が、いない。
入れたし明かりついてるし。なんか妙に生暖かい様な。さっきまで人がいたような感覚も覚える。だからこそ違和感を強烈に感じた。
「すみませーん!」
とりあえず叫んだ。
しかし返って来るのは静寂のみ。
どうしたものか。どうしたものか!
隣の倉庫、覗いてみるか。
その後私は数え切れないほど多くの倉庫の中に入った。しかしことごとく無人だった!
「ひぇぇ。もぅ30は回ったよぉ。」
回っていく内にわかったのは、永遠に続くこの倉庫は同じ会社のもののようだということ。まぁおんなじ外観だから薄々わかってはいた。しかし、内装もそっくりそのままおんなじなのだ!まるで建物ごとコピーしてる様にも思える。
加えて何度も空を見上げてもあの異常な光景はやっぱりある。目が痛くなるほどこすってもやっぱり重力逆さま世界が見えた。
はぁ。もう何個目の倉庫かわからない。不安は増殖する。自動ドアが開き、中の様子が見える。
無人だろうな。そう思い込んでいた。
しかしそこには、人がいた。
人。女。若い。だらしなくボサボサのロングヘア。ちょっと太り気味な体つき。よく見ると目が大きく、ガチれば美人に見られそうなその風貌は。
私だ。そこに私がいる。
え?嘘でしょ。ど、どっぺるげんがー?
もう一人の私は、ニヤニヤと嗤っていた。そしてポシェットの中からギラギラ光るナイフを取り出す。
そして、切りかかって来た。
回避できない強烈な悪意は私の体を刻んだ。胸あたりを切られたのだ。
「うぅ。あうっ。」
血が。血が出る。痛い。痛い!
でもまだ、幸運にも傷は浅い。逃げなきゃ。逃げなきゃ。おうちに帰りたいよ。私が何をしたっていうの。
激痛に涙をポロポロこぼしながら、出血もポタポタこぼしながら自動ドアが開いた瞬間外に出る。
「だれかぁ。だれかぁ!」
力ない叫びは虚しく響く。無人。
道路に出て、走る。
しかし上手く走れない。
後ろをちらりと見る。
そこには、先程の。もう1人の私が。
ナイフを今、私の背中に突きつけようとしてい。
「アアアアア!」
背中にナイフが刺された。熱い。痛い。痛い。嫌だ。なんで。
経験したことのない痛み。グロテスクな感触。
「きゃはははは!」
もう1人の私は嗤っていた。なんだこいつは。目がいっちゃってる。怖い。怖い。全身の激痛と、戦慄が混ざり合う。気持ちが悪い。うぇぇ。
「お前誰だよぉ!やめてよぉ!」
情けない声で叫んだ。するとやつは
「ふへへへ。ふひひひひひひひ。」
壊れた機械のようによくわからないことを言っている。
このままでは。このままでは。
こいつに殺られる。
本能的な行動だった。
私はやつにタックルしていた。
不意をつかれたようでやつは体制を崩し、頭をアスファルトに打ちつけた。
やつは完全に倒れた。すかさず私はナイフを奪う。
「舐めやがって。舐めやがってぇぇぇ!」
私の中にはもう怒りしかなかった。恐怖は消えていた。殺られるなら殺るしかない。人間的理性から動物的野性へと、OSが切り替わったような感覚。
躊躇せず私はやつの喉に。
ナイフを突き立てた。
鮮血が飛び散り、私は真っ赤に染まる。
やつはとうに意識を失っていて、私は呆然とする。急に理性が戻ってきたようだ。
人を、初めて刺した。
手が急に震えてきて、さっきまでの自分が恐ろしくなって。
「あ、うぅ。もうやだ。いやだ。嫌だ。帰りたい。おうちに帰る。」
自分でも何言ってるかわからないままやつから私は離れようとする。やつは喉にナイフが刺さり、淡々と血は吹き出している。血溜まりが出来始め、もうやつが生きていないことは明らかだ。自分と同じ顔のやつが死んでいる!その光景はどこか冒涜的に感じられた。
もうなにがなんだかわからないし、考えたくもない。体の裏表には激痛が未だ走っている。己も流血が激しい。
私は力尽きて倒れる。
薄れゆく意識の中で。
ゾンビのように立ち上がったもう1人の私が。
喉にナイフが突き刺さった私が。
拳を振り下げようとする様子が見えた。
こうして私は、生涯を終えた。