第8話
文字数 2,503文字
「君達にも明日から働いてもらいたい。」
伊東は言った。
「もちろんですが...どんなことをすればいいのですか?」
「探索班に2人は入ってもらいたい。この無限にも広がる異界から、脱出の手立てを探すんだ。その上で...」
伊東は麻里奈に目配せした。すると麻里奈は面倒くさそうに伊東が「スマホ」と説明していたデバイスを僕とジェーンに渡した。
「これは黒井殿達専用の連絡スマホでありますwwww。拙者謹製アプリを使えばよろしwwww。」
「でも待ってください!電波あるのここ?」
ジェーンが聞いた。確かに、これがケータイの進化形態ならばその通りで疑問が湧く。
「摩訶不思議七不思議でござるが、この異界はモバイル回線およびWi-Fiが完備されているでござる。謎技術が過ぎるwwww。」
「でもそれなら助けを求めて外部に連絡を取ることは...」
「無理でござる。ブラウザ開いてもまともに閲覧できるのは何も無いのでありますwwww。悲しきかな接続先およびメッセージの届け先がこの異界にないと何1つ意味はありませぬwwwww。ちな検証済みwwwwww。」
麻里奈は早口で的確に答えた。なるほど...しかしよくその「スマホ」がこの世界の回線に接続できたものだ。規格とか違いそうなものだが...
「あとこれ。君達の武器だよ。」
伊東は平然と重そうな、黒光りしている、拳銃を2丁差し出してきた。拳銃。拳銃!?
「どこから持ってきたんですか!」
「あぁ。驚くのも無理ないねぇ。ここね。所々落ちてるんだよね、こういうの。」
「ゲームみたいだよなァ!まぁそこのポリスウーメン朱音のいた世界じゃ銃規制なんてなかったらしいからな!銃規制ある日本人の感覚じゃまさにゲームだが、そこら辺に銃落ちてても変じゃないのさ!」
確かにゲームみたいだ。都合が良すぎる。しかし瑠璃華の言う通りで、前提から狂っているこの世界じゃ銃くらい落ちていてもおかしくはない。もしかしたら倉庫の中に武器庫の1つくらいあるのかもしれない。この異界には現実のような銃規制なんて存在しないのは明らかだ。パラレルワールド理論が目前で実証された事もあり、納得してしまう。しかし銃規制がない日本とか...なんか悲惨になってはいないだろうか。某超大国の如く銃撃事件が連発してたりするのかな。その割ににかにかしている朱音の笑顔が少し不気味に感じる。
「使い方は...朱音さんが教えるの上手いよ。後で習っておくといい。この世界なら射撃し放題だし、弾の予備は今のところ潤沢だ。ただまだこの倉庫にも奴らがいるかもしれないから気をつけてね。」
「私ですかぁ!ふへへ、いいですよ。お姉さんが教えてあげましょう!」
「大して年の差ねェだろ...」
確かに朱音は20歳、だが僕と2つしか違わないのはなかなか興味深いことだ。警察官の制服が、社会人として大人っぽく見えている。
「新人ゥ。てめぇ致命的に銃が撃てねェようだな。」
僕とジェーン、朱音とついでに瑠璃華で射撃の演習に来ていた。ここは3階の仕分け場。広い分狙い撃ちがしやすい。だが僕は...
「ケイジィ。てめぇの筋肉とガタイは飾りなんかァ...」
瑠璃華に詰められていた。
「返す言葉もございませぬ。」
僕はそう返す。その通りである。実銃は想像以上に反動がある。いくら照準を合わせても撃ったら変な方向に行く。
ズドン。
重い銃声が響く。隣で演習中のジェーンが撃ったのだ。
「すごい!すごいよジェーンちゃん!百発百中とはこのことだね!」
朱音がジェーンを称賛している。ジェーンが撃った先は積み重なった段ボールがある。1番上の段ボールにはダーツの的みたいなお手製ターゲットが描いてある。そのど真ん中をしっかりと大穴が穿たれている。僕の背筋には凄まじい劣等感が走る。
「ケイジィ!てめぇは...無理して遠くから撃つな!」
「で、でもどうすればいいんですか?」
「簡単だ!至近距離まで詰めて撃っちまえ。そうすりゃ当たるだろ。グビッ。」
そんな脳筋な...僕は呆れながら、瑠璃華はテネシーウイスキーを瓶ごとストレートであおっている。
「なんならケイジィ!ちとあそこで腕相撲しようぜ!」
「腕相撲ですか!?ここで!?」
瑠璃華は近くにあったデスクを指さした。
「まぁ、いいっすけど。」
「ほう。やっぱりお前は近接向きだぜェ。」
腕相撲は僕が勝った。いや、勝って当たり前ではある。瑠璃華は女性なのだ。しかし、しかし。瑠璃華は強かった。170cmくらいありそうな身長から体格は良いとは思っていたが、筋力が凄い。腕相撲が始まった直後僕は強烈な重力を腕に感じた。舐めたら負ける...!そう思い本気になる。しかし、動かない。硬い。硬すぎる。
まるで弁慶の仁王立ちの様に動かない。さらに本気になることでようやく勝てた。
「お前の筋肉はモノホンサァ。ちなみにメンバーの中じゃ腕相撲はアタシが最強なんだ。」
なに!?伊東や宏太などの男性陣より強かったのか!まぁ僕もあんだけ腕相撲で手古摺らされたのは実に久しぶりであった。納得はできる。
「てめぇなら多分あのヘドロ野郎共とも素手でやり合えるだろうよォ!アタシでもまあまあヤレるからなァ。なんかスポーツやってたんかァ?」
「一応ちょっとばかり肉体のぶつかり合うやつをやってたっすね。辞めましたけど。筋トレは辞めてからも続けてます。」
下手くそではあった。しかし筋力に物を言わせて部活では活躍していた。脳筋プレーを炸裂させるので部活でもゴリラと僕は良く言われていた。推薦で進学するのを辞めたので部活も辞めてしまったが...ジムに通ったりして筋肉は落ちないようにしている。
「おめぇは強いぜ。明日から期待してるぜェ!ひっく。」
瑠璃華は酔っぱらいながらも爽やかに笑いながら、そう言った。少しびっくりした。よく見ると彼女の顔は整って見える。
そして久しぶりに褒められた。自己肯定感が我ながら低いと自覚しているため、うれしさが心に広がる。僕はちょろい奴と思われるかもしれない。瑠璃華は、アル中だが決して悪いやつじゃないとも思えた。
伊東は言った。
「もちろんですが...どんなことをすればいいのですか?」
「探索班に2人は入ってもらいたい。この無限にも広がる異界から、脱出の手立てを探すんだ。その上で...」
伊東は麻里奈に目配せした。すると麻里奈は面倒くさそうに伊東が「スマホ」と説明していたデバイスを僕とジェーンに渡した。
「これは黒井殿達専用の連絡スマホでありますwwww。拙者謹製アプリを使えばよろしwwww。」
「でも待ってください!電波あるのここ?」
ジェーンが聞いた。確かに、これがケータイの進化形態ならばその通りで疑問が湧く。
「摩訶不思議七不思議でござるが、この異界はモバイル回線およびWi-Fiが完備されているでござる。謎技術が過ぎるwwww。」
「でもそれなら助けを求めて外部に連絡を取ることは...」
「無理でござる。ブラウザ開いてもまともに閲覧できるのは何も無いのでありますwwww。悲しきかな接続先およびメッセージの届け先がこの異界にないと何1つ意味はありませぬwwwww。ちな検証済みwwwwww。」
麻里奈は早口で的確に答えた。なるほど...しかしよくその「スマホ」がこの世界の回線に接続できたものだ。規格とか違いそうなものだが...
「あとこれ。君達の武器だよ。」
伊東は平然と重そうな、黒光りしている、拳銃を2丁差し出してきた。拳銃。拳銃!?
「どこから持ってきたんですか!」
「あぁ。驚くのも無理ないねぇ。ここね。所々落ちてるんだよね、こういうの。」
「ゲームみたいだよなァ!まぁそこのポリスウーメン朱音のいた世界じゃ銃規制なんてなかったらしいからな!銃規制ある日本人の感覚じゃまさにゲームだが、そこら辺に銃落ちてても変じゃないのさ!」
確かにゲームみたいだ。都合が良すぎる。しかし瑠璃華の言う通りで、前提から狂っているこの世界じゃ銃くらい落ちていてもおかしくはない。もしかしたら倉庫の中に武器庫の1つくらいあるのかもしれない。この異界には現実のような銃規制なんて存在しないのは明らかだ。パラレルワールド理論が目前で実証された事もあり、納得してしまう。しかし銃規制がない日本とか...なんか悲惨になってはいないだろうか。某超大国の如く銃撃事件が連発してたりするのかな。その割ににかにかしている朱音の笑顔が少し不気味に感じる。
「使い方は...朱音さんが教えるの上手いよ。後で習っておくといい。この世界なら射撃し放題だし、弾の予備は今のところ潤沢だ。ただまだこの倉庫にも奴らがいるかもしれないから気をつけてね。」
「私ですかぁ!ふへへ、いいですよ。お姉さんが教えてあげましょう!」
「大して年の差ねェだろ...」
確かに朱音は20歳、だが僕と2つしか違わないのはなかなか興味深いことだ。警察官の制服が、社会人として大人っぽく見えている。
「新人ゥ。てめぇ致命的に銃が撃てねェようだな。」
僕とジェーン、朱音とついでに瑠璃華で射撃の演習に来ていた。ここは3階の仕分け場。広い分狙い撃ちがしやすい。だが僕は...
「ケイジィ。てめぇの筋肉とガタイは飾りなんかァ...」
瑠璃華に詰められていた。
「返す言葉もございませぬ。」
僕はそう返す。その通りである。実銃は想像以上に反動がある。いくら照準を合わせても撃ったら変な方向に行く。
ズドン。
重い銃声が響く。隣で演習中のジェーンが撃ったのだ。
「すごい!すごいよジェーンちゃん!百発百中とはこのことだね!」
朱音がジェーンを称賛している。ジェーンが撃った先は積み重なった段ボールがある。1番上の段ボールにはダーツの的みたいなお手製ターゲットが描いてある。そのど真ん中をしっかりと大穴が穿たれている。僕の背筋には凄まじい劣等感が走る。
「ケイジィ!てめぇは...無理して遠くから撃つな!」
「で、でもどうすればいいんですか?」
「簡単だ!至近距離まで詰めて撃っちまえ。そうすりゃ当たるだろ。グビッ。」
そんな脳筋な...僕は呆れながら、瑠璃華はテネシーウイスキーを瓶ごとストレートであおっている。
「なんならケイジィ!ちとあそこで腕相撲しようぜ!」
「腕相撲ですか!?ここで!?」
瑠璃華は近くにあったデスクを指さした。
「まぁ、いいっすけど。」
「ほう。やっぱりお前は近接向きだぜェ。」
腕相撲は僕が勝った。いや、勝って当たり前ではある。瑠璃華は女性なのだ。しかし、しかし。瑠璃華は強かった。170cmくらいありそうな身長から体格は良いとは思っていたが、筋力が凄い。腕相撲が始まった直後僕は強烈な重力を腕に感じた。舐めたら負ける...!そう思い本気になる。しかし、動かない。硬い。硬すぎる。
まるで弁慶の仁王立ちの様に動かない。さらに本気になることでようやく勝てた。
「お前の筋肉はモノホンサァ。ちなみにメンバーの中じゃ腕相撲はアタシが最強なんだ。」
なに!?伊東や宏太などの男性陣より強かったのか!まぁ僕もあんだけ腕相撲で手古摺らされたのは実に久しぶりであった。納得はできる。
「てめぇなら多分あのヘドロ野郎共とも素手でやり合えるだろうよォ!アタシでもまあまあヤレるからなァ。なんかスポーツやってたんかァ?」
「一応ちょっとばかり肉体のぶつかり合うやつをやってたっすね。辞めましたけど。筋トレは辞めてからも続けてます。」
下手くそではあった。しかし筋力に物を言わせて部活では活躍していた。脳筋プレーを炸裂させるので部活でもゴリラと僕は良く言われていた。推薦で進学するのを辞めたので部活も辞めてしまったが...ジムに通ったりして筋肉は落ちないようにしている。
「おめぇは強いぜ。明日から期待してるぜェ!ひっく。」
瑠璃華は酔っぱらいながらも爽やかに笑いながら、そう言った。少しびっくりした。よく見ると彼女の顔は整って見える。
そして久しぶりに褒められた。自己肯定感が我ながら低いと自覚しているため、うれしさが心に広がる。僕はちょろい奴と思われるかもしれない。瑠璃華は、アル中だが決して悪いやつじゃないとも思えた。