第7話

文字数 1,825文字

エ「酷いな…ほとんど焼け焦げてる」
サ「足場も所々抜け落ちてます」
エ「…トッド…ここまでしなくても…」
サ「わっ!」
崩れる床。
掴まれる腕。
エ「っ!…大丈夫?」
サ「あ…ありがとう…ございます…」
エ「気をつけてね」
手を繋ぐ。
もう落ちないように、ずっと一緒にいられるように。
サ「…ずるいですよ、エンドさん…」
エ「何度も言ってるでしょ?俺はそういう性格だって」

フ「…おっと。危ない危ない…」
マイン「ここは…君の部屋か」
イゼ「…初めて来るな、ここ。」
フ「ここもダメか…」
廊下を走る音が聞こえる。
近づいて来る。
フ「…おい。廊下は走るな。特に今は…」
言葉が詰まった。
フ「どうしてここに」
妖夢「だって…今すっごく大変なんでしょ?幻想郷にも全然帰ってこないし…」
イゼ「あれ?妖奈達は?」
妖夢「留守番をお願いしてます。」
フ「…とにかく入れ」
妖夢「はーい」
マイン「…相当酷くやられたね。火元の2階は全焼、1階もほぼ全焼してる。3階4階はまだ軽微だけどそれでも被害は大きい。無傷と言っていいのは…ないね」
フ「倒壊してないだけマシだろ」
イゼ「復旧にも時間がかかりそうだね」
フ「…だな。先が思いやられる。俺は先に降りるぞ」
妖夢「私も行く」
フ「…マジで気をつけろよ?」
妖夢「大丈夫だって〜」
部屋を出ていく。
マイン「…落ちないかな」
イゼ「大丈夫じゃない?」
マイン「だといいけど」

衛兵「司令!我らはどうすれば?」
フ「復旧作業を頼む。優先するのは1階、及び地下だ。」
衛兵「その件でしたら地下の復旧は終わっています。」
フ「そうか。仕事が早いな」
衛兵「いえ!これも竜の国の為でございます!」
フ「結構。引き続き頼んだ」
衛兵「はっ!」
フ「…いつ聞いても力強い返事だ」
妖夢「若いね…」
フ「貴重な若手だ。死なせる訳には行かないが…時期が時期だ。いつ死ぬかもわからん」
不思議な人だ。
まるでその人がいつ死ぬかが解っているような…
目を合わせると全てが見通されている気がする。
フ「妖夢。」
妖夢「…なに?」
フ「これからも、俺と一緒でいてくれるか?」
妖夢「もちろんだよ。私も離れたくない」
フ「…ありがとう。これ以上失ったら…俺はもう狂ってしまう気がしてな…」
親を奪われた。
恋を砕かれた。
未来も壊された。
これ以上、何を失えばいい?
何を捨てれば、救われる?
いつもそう考えていた。
今は違う。
今残っているものを、守るのだ。
『敵襲!敵襲!非戦闘員は直ちに非難せよ!繰り返す!……』
フ「…行くか」
妖夢「うん。」

影「トッド様の為に!」
影「滅せよ!」
影「半竜を逃がすな!」
この力は…
俺の大事なものを、俺自身を守る為にある。
出し惜しみしては無駄だ。
たった1回の油断が、思わぬ物を失うきっかけとなる。
─俺の取れかけた翼のように。
フ「憑依」
影「いたぞ!」
フ「覚醒」
妖夢「…」
フ「死にたい奴から前に出ろ。一瞬で斬り捨ててやるから…瞬きするなよ?」
影「ぬおおおああ!」
身体が真っ二つに斬れる。
返り血で染まる顔。
秘めたる「恐怖」が影の背中をさする。
足音。
「死」が近づいて来る。
思考回路がショートする。
影「う、うあああああっっ!」
深く抉る。
声すら出ない。
何も言わないのが恐怖を更に煽る。
影「くそぉ…うおおおおぉ!」
自身の腹に刀が突き刺さる。
影「がっはぁ!っ…」
一気に引き抜かれ、斬られる。
血が飛ぶのが見える。
真っ赤に染まった刀。
死に様を見届けるその顔。
その姿は「悪魔」とも形容できる。

フ「…」
妖夢「あっと…」
衛兵「司令!…しれぇ!?」
フ「拭くものは無いか」
衛兵「少々お待ちを!」
妖夢「あそっか…浴室もだっけ」
フ「いや…部屋自体は無事なんだが水道管が破裂してな」
妖夢「あれ?浴室って何階だっけ?」
フ「1階」
妖夢「全焼したんじゃ?」
フ「隅の方にあったからなんとか無事だった」
衛兵「お待たせしました!」
フ「御苦労」
衛兵「良ければ銭湯へ」
フ「着替えてから行こう」
衛兵「それではお着替えを…」
フ「それくらいは自分でやる。お前は仕事に戻れ」
衛兵「…はっ。お気を付けて」
フ「…はぁ」
妖夢「お疲れ様。」
フ「これを頼む。さっさと着替えてくるから」
妖夢「はーい。」
焼け落ちた城の一角。
復讐の刃はまだ折れぬ。
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