第4話

文字数 1,899文字

フ「…邪魔だな」
王の間の扉を塞ぐ影。
「貴様を通す訳には行かぬ」
フ「その剣の腕だけは認めてやるよ」
刀を持つ手を変える。
フ「

でやらせてもらうよ」
左持ち。
「掛かってこい!」
エンド達もそれぞれ立ち往生している。
俺が早く片付けなければ…
フ「…」
刀に魔力を流す。
一撃で決める。
「覚悟!」
フ「はあっ!」
「な……見事……」
フ「…久々に使ったな…この技」
致命之一撃(チメイノイチゲキ)。その名の通り相手の致命傷となる場所を斬る技。
単純故に、強い。
フ「…さて、どうしようかな?」
援護に行こうと思ったが…
壁に隔てられてしまった。
フ「良し。やるか」ニヤリ

エ「あのさぁ…」
「くくく。この壁は我々全員が倒れるまで完全には壊れない。そして扉もな…」
サ「うっわ面倒…」
「まずは貴様らから殺してやる!」
エ「…そうやって言ってて俺たちの誰かを殺したことはあるか?」
サ「あなた達ってホント馬鹿ですよね」
「フン!大口を叩けるのもそこまで…」
壁に穴が空く。
フ「お…案外脆いのな」
ぱっくり空いた口が塞がらない。
エ「あ、兄さん」
サ「凄いですね!」
「な…き、貴様っ…」
エ「さあ、どうする?」
「やめっ…やめろ!近づいてくるな!」
ファイナル、エンド、イゼ、サクラの4人はとある人からも剣術を学んでいた。
それはサクラの母親、ベル・キョウカだ。
その人から受け継いだ剣術…
「やめろ…!」
目を閉じる。
体に痛みは感じない。
サ「桜花一閃(おうかいっせん)…」
エ「


血飛沫が桜のように舞い散る。
フ「綺麗だと思わないか?」
少しずつ暗くなる視界。
何故か、悔いはなかった。

イゼ「ふぅ。やっと終わったー…」
マイン「壁が崩れていくな。」
フ「そっちも終わったか。」
サ「見てください!扉が!」
エ「…兄さん、覚悟はいい?」
フ「…あの人はもう俺達が知っている人じゃない。」
ホロ「来たか…我が子供達…」
フ「フィルと同じだ…ただの幻、あの人自身に悪意はない…」
ホロ「ファイ…ナル…」
フ「!」
エ「兄さん!」
フ「違う…ちがぁう!」
頭の中で声が反響する。
フ「貴様は父上じゃない!その声で…その声で喋るなあぁっ!」
ロッキー「落ち着け!」
ホロ「わた、しは…ここ、に、いるぞ…」
フ「……うああああああああぁぁぁ!!
怒り狂う。
理性が吹っ飛ぶ。
フ「お前が!あなたが!俺を狂わせた!貴様が…貴様がぁっ!」
影が作り出したただの人形。
フ「俺は…あなたのようにはなれない…だから…この道を選んだんです…」
エ「兄さん!しっかりして!」
レグルス「ファイナル様!…ファイナル様!!
フ「俺は…」


…俺は!
フ「お許しください、父上…」
エンドとレグルスの腕を振り払う。
刃は我が手に。
今こそ決戦の時。
フ「ホロ・ドラゴン…あなたを斬る。」
ホロの口角が上がる。
ホロ「…来い」
切りつける。
金属音。
何度か打ち付け合う音が王の間に響く。
ホロの動きに違和感を感じる。
まるで上から糸を垂らされているような動き。
役者は立派なのに裏方が下手だ。
ふわふわした戦い方なのが分かる。
ホロ「……」
フ「…っ!」
チャンスなのに斬れない。
どうしても躊躇してしまう。
ホロ「どうした。やれ!私はお前の

では無い!

なのだぞ!」
フ「っぐ…」
立ち上がる。
気づいたら体はボロボロだった。
体の至る所が痛い。
ホロ「はっ!」
一際大きい音が響いた。
フ「覚悟は出来た…」
弾く。
ホロ「ぬぐおおっ…」
腕を突き出し、刺す。
ホロ「ぐうっ!…」
フ「っ…!」
溢れる思いを押し殺す。
今は違う。
ホロ「…よくやった。お前は私の自慢の息子だ、ファイナル…」
目から流れる雫。
消えてゆく父の身体。
影はもう居ない。
今の父は本当の父親だ。
エ「父上!」
イゼ「お父様ぁ!」
ホロ「私は…幸せ者だな、…きょうだいを、頼んだぞ。」
フ「…はい…お任せ下さい…」
ホロ「ふ、ふふふふ…向こうにセリカが見えるわ…セリ、カ…いま、いくぞ…」
…完全に消えた。
イゼ「お父様…」
フ「父上…俺は、あなたのようにはなれません。だから…この世界の上で、見守っていてください。俺の成長を…俺達の行く道を…」
エ「兄さん…」
フ「…もう、終わったんだ。ここにいる理由もない。行くぞ」
転移門がある中央広場までの道のり。
月が照らす暗き道。
それはまるで亡き父が見守っているかのように、静かに佇んでいた─
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