第6話

文字数 1,676文字

ゼロ部隊の部屋。
こじんまりとした部屋だが、過ごすには十分だ。
そこの寝室。
レイル「あっと…ファイナルさん?」
フ「なんだ。」
寝ぼけた目でレイルの方を見る。
レイル「ジェイさんが呼んでました。」
フ「あ…?ジェイが?」
レイル「はい」
フ「んだよ全く…」
愚痴を言いながら布団を片す。
フ「ふあ〜ぁ…お前も来るのか」
レイル「私も来いって…なんでしょうね」フ「俺が知るかよ」

ジャン「お、来たか。すまんな、こんな高い所まで」
フ「どこかと思えば…城の1番上かよ」
レイル「それで…話って?」
ジャン「そうだったな。…ファイナル、ちょっとあれを見てくれ」
フ「は?…あれか?…うーん?」
ジャン「望遠鏡要るか?」
フ「もっと早く渡せよ…」
覗く。
フ「あれは…エキドナの兵士だろ?」
ジャン「顔をよく見ろ」
フ「…まさか…影!?」
ジャン「ああ。戦死者の顔によく似ている。ソレにエキドナの兵士だけじゃない。あらゆる死者を影は戦力にしている…」
フ「なんだ…人形の次はゾンビか?」
ジャン「警戒するに越したことは…」
衛兵「ジェイ様!」
ジェイ「何があった」
衛兵「見回りの兵士から報告が。『城内に大量の爆薬を発見』と!」
レイル「ええっ!?」
ジャン「何処だ!」
衛兵「客室からのようで…」
ジャン「…消火は?」
衛兵「現在消火中、との事」
レイル「よかった…とりあえずは安心…」
フ「…ジェイ!そいつらを火から遠ざけろ」
ジェイ「なんでだよ…?」
フ「…その火、多分消えないぞ」
ジェイ「じゃあどうすれば…あ、おい!」
階段を駆け降りる。
もし影が火を仕込むなら…
そうそう消えぬ炎を選ぶはず。
いや…もしや…
ロウセツ「ああ!ファイナル様!」
フ「ロウセツ!アルナは!」
ロウセツ「どうかお助けください…!アルナ様を…!」
フ「っち…!」
とんだ時限爆弾だった。
炎を封じ込めた氷が溶け始めた。
アルナはまだ子供。
まともに力すらコントロールできない。
さしずめ調整が出来なくなったガスコンロだ。
フ「アル…あっつ!」
凄まじい。
普段炎に『熱い』と感じることは無かったが…
熱い。
熱すぎる。
このままだと丸焦げになってもおかしくないぞ…
フ「あ…っ…ある…な…!」
思うように声が出ない。
奥の方にうずくまっているものが見える。
アルナだ。
フ(まだ大丈夫…早くここから出さないと─)
「動くな」
フ「…」
「ファイナル、だな?俺はトッド。覚えてるだろ?」
フ「一々雑魚を覚えているほど俺の頭も空じゃないんでね。」
トッド「…その娘を渡せ」
フ「…それは出来ん」
トッド「なら死ね。」
フ「悪いな。このお方を「はいどうぞ」とは渡せない。お引き取り願おう」
トッド「…俺の炎がここを焼き尽くしても構わんのだな?」
フ「何を言っている。勝負はな…」
刀に手を掛ける。
フ「お前が俺の後ろにたった時点で決まってるんだよ。」
ゆっくりと、歩く。
フ「出直せ。相手にならん」
トッド「ああ…うざってぇ。いつか殺してやるからな…」
炎の渦は消えない。
黒煙が廊下に広がっている。
煙を吸って倒れる物も出てきた。
早く脱出しよう…
力丸「ゲッホゲホ…や、やっと見つけたぜ…」
フ「力丸!?」
力丸「おう、待たせたな」
フ「外は…」
力丸「付いてきな」
何とか外に出れた。
避難用の脱出口も開いている。
フ「まだ上階に取り残されている奴らは…」
力丸「まぁ安心しろよ。…ゼンの襲撃から何も対策をしてなかった訳じゃねぇぜ」
フ「…非戦闘員が大量に殉職したアレか」
力丸「教訓って奴だ…お、やっと来たな」
フ「あれは…救助用袋か」
滑り台のような袋。
あくまで『

』だ。
フ「消火は…出来なかった」
力丸「その点も心配すんな。ロウセツが試しに消してみたら案外消えたからよ。」
フ「はぁ…?」
力丸「俺らと入れ違いで入ってったからそろそろ消えると思うぞ」
一波乱あったレミル城。
怒りの道化、トッド。
彼の炎は、刃は首に突きつけられたままだ。
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