offensiveってどういうこと?

文字数 1,169文字

ブラックフェイスについて日本語で書かれた文章を見ると「差別」という単語が良く出てくるんですが、英語だとどうなんでしょうか。
私も少ししか読んでいないけど、discrimination(差別)という単語は記憶に残っていないのよ。racist(人種差別的)という単語は度々見たけど。中でも、offensiveという単語を使っている文章が多かったと記憶しているわ。
offensive?
素直に解釈すれば、「攻撃的」という意味だけど。ただいくつか辞書を引いてみた感じだと、「侮蔑的な」「苛立たせるような」「不快な」といった意味でも使われているようね。
それは……嫌な予感がします……。
ええ。「侮蔑」をする側の意図の問題として、「苛立つ」「不快」を受け手の主観の問題として還元しようとする動きに利用される恐れがあるわ。
えっと、もうちょっと噛み砕いてお願いします。
まず前者は、「差別の意図はない」という言い訳のことね。「俺たちはあんたの面白さを認めているから笑う。むしろあんたを賞賛してるんだ」みたいなの。
でも、今までの話を踏まえれば、「面白いあんた、という勝手なイメージの押し付け」なのが問題だってことはすぐわかります。
そして後者は、「人が何を不快に思うかは、恣意的であって、共通の答えはない」という考え方ね。「不快だと言われたら何でもやめねばならないのか、それでは何もできなくなる」みたいな。
それも本質じゃなくて、「その人が望む自己表現のあり方を一緒に模索すること」こそが必要なんですよね。
ええ。

それでも、この文脈において日本語で「差別」という言葉を使っているのは――これは前に話した「差別という言葉を便利に使い過ぎた」にも通じることだけど――実はあまり的確ではなくて、offensiveにあたる何らかの別の言葉が必要なんじゃないかとも思うのよ。

というと?
私はoffensiveという単語を頭の中で「他害的」と訳してる。あくまで私家版だけどね。
なるほど。それと、「差別という言葉が的確でない場合」についてもっと詳しく聞きたいです。
そうね。差別という単語には「差」が含まれているわけで。例えば職業における性差別ということを考えると、女性の管理職が少ないとか、女性会社員の平均給与が男性のそれの半分くらいしかないといった差は歴然としてあるでしょう。でもそれが「女に課長はさせられないよ」みたいな誰かの直接的な言動を伴っているとは限らないわけで。
差別を受けることと、差別に関係した言動をされることとは、イコールではないんですね。
そう。その二つは、分けて考えなきゃね。そうしないと、「黒人を画面から排除せず、笑いの対象として迎え入れている」みたいな誤解が蔓延ることになるからね。そのためにも、差別とは違う、offensiveに相当する日本語が必要だと思うのよ。
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登場人物紹介

久恵里(くえり)

主に質問する側

せんせい(先生)

主に答える側

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