ホワイトは? イエローは? 隈取は?

文字数 1,295文字

「黒塗りがダメなら白塗りもダメか」みたいなことを言う人が本当に多かったです。
ここまで考えてきた久恵里ちゃんなら、そのおかしさは指摘できるよね。
はい。肌に色を塗ることが問題なんじゃなくて、それで他人に勝手なイメージ……ステレオタイプを押し付けることが問題なんですよね。
ええ。だから、「肌に色を塗ること」だけをあげつらっても意味はないわけ。その行いが表すものは何なのか、を考えなきゃね。

実際、2014年には航空会社のCMが白人へのステレオタイプだと批判を受けて放送中止したことがあったわ。

そういうことがあったんですね。それも、他と待遇が違う……差別の問題としては捉えにくいところがありますね。
その一方で、日本の伝統芸能やお笑いなどで、顔を真っ白に塗ることがあるわけだけど。それが白人など実在する人種を表しているものなのか、と考えれば、違うわよね。
伝統芸能というと……歌舞伎の隈取って、ヒーローやヴィランの超人的な力を表しているものだ、というのを何かで読んだ覚えがあります。
あの隈取みたいな顔の人が実際にいるか? と考えたら、そうじゃないことは明らかだものね。その点で、ブラックフェイスとは全く異なるものと言える。

あとは、お正月の羽根つきとか、顔に墨や土を塗る行事が各地にあるわけだけど、それが実在の人種を表すものかは「?」よね。

でも、「何を表しているか」は見る側が勝手に決めてしまうところがありませんか?
だからこそ、自分がそれで何を表そうとしているのか、受け手がそれをどう受け止めるだろうか、ということに、常に注意を向け、説明ができるようにしていないといけないわけよ。
* * *
さて、日本人やアジア人に対するステレオタイプというものもあるわけだけど、見聞きしたことはある?
えっと……背が低くて、脚が短くて、目が細くて、歯が出ていて、眼鏡をかけていて、カメラを提げている……こうして挙げていくと滅入りますね……。
実際、日本人やアジア人をそういう風に表すことは、イエローフェイスと呼ばれてしばしば批判を受けているわ。

写真共有サービスのフィルタがそうした批判を受けて取り下げられた例がある。

えっと、これは……「おたふく」ですか?
なるほど、「おたふく」もステレオタイプの一種かもしれない。それに、誰かの顔を「おたふく」にたとえるのは褒めることではないしね。
これはイエローフェイスだそうですが、他にもステレオタイプってあるんでしょうか。
そうね、ケン・パジェットという人が人種のステレオタイプについてまとめたサイトがあるんだけど……その中では、Blackface(アフリカ系人に対するステレオタイプ)、Yellowface(アジア人―)、Brownface(ヒスパニック―)、Redface(アメリカ先住民―)、Arabface(アラブ人―)、Jewface(ユダヤ人―)が挙げられているわ。
あれ、ホワイトフェイスはないんですね。
サイト作者の考えとしては、あくまでメディアの支配権を握っているのは白人だから、ステレオタイプの被害者とはみなさない、ということみたいよ。これが正しいかどうかは留保しておくけど。
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登場人物紹介

久恵里(くえり)

主に質問する側

せんせい(先生)

主に答える側

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