宿命(無患子)

文字数 504文字

十二月十九日

私は無花果の体から分離されて、無花果の双子として、彼女と生涯を共にしてきた。幼い頃から病弱で、五歳で「ディーツー〇八七」という生涯治らない感染症にかかった。感染者の唾液や血液を一度触れただけで感染してしまう病気。隔離された施設で過ごし、学校にも行けない。家族はほとんど面会に来ず、部屋の隅でただ祈ることしかできなかった。

家族はいつも私を腫物のように扱った。丁重に扱われているようだが、それは表向き。私はこの家に迷い込んだ害虫のようなものだった。皆の眼には〟ハヤクシネ〟という言葉が居座り続けている。
 対して無花果は文字通りの優等生。私が人間以下なら、彼女は神以上。人望も厚く、誰も悲しませない。誰も苦しませない。無花果だけは月に一回、必ず施設に面会に来てくれたのだ。
 
〈十六歳になったら、お前らのどちらかがこの世から一度消えて、神様に嫁入りする〉…

どちらを選ぶか、もう自明なことだ。考えるまでもない。だから私はその日をただ待つのみなのだ。

〈どちらかがあの世に逝かなければ、二人とも不吉な人生を歩むことになる。五体満足で生涯は終えられない。これは神様が決めたことだ。仕方のない、宿命なんだよ。〉……
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