C12

文字数 589文字

「いやはや二百年ぶんを処理するのに五百年かかったとはね」
 まあようやくメドがついたということだ。これからやっと、普通の暮らしが始められる。
 いや反対に。これからどうしたらいいんだか、困ってしまうくらいだ。
「なんせ、ヒイヒイヒイヒィ……って言い始めて失敗だったな。大昔からやってるもんな、この事業」
 黒くギッシリと敷き詰められ何階建てにも立ち並ぶコレ、墓碑のように見えてくるから不思議だ。それならばココは墓苑といったところだろう。ある意味、その通りである。

 途方もない作業。これをみんな、一生かけて代々続けてきた。だからこんなことを言った先人がいたのも当然だ。
『まるで賽の河原で石積みだな』
 だが幸いにしてこれは、賽の河原よりはマシだ。地獄の番人に崩されることもなく、いつかは終わる。その見込みがあったから、そう信じて、ずっと続けてきたのだ。そのために日々節制して、地道に地道に、マジメにマジメに、みんな生きて、そして死んでいった。コレに一生を捧げて。なによりそうしないと私たちは死んでしまうのだから。

 最終処分場。
 その昔に先祖が掘り出したソレを、回収し、埋め戻す。
 もしも私たちが滅亡でもしたとしたら、その後に見つけた生物はいったいコレは何なんだと考えるだろう。兵馬俑か? モノリスか? それとも。彼らもまた嬉々として、過ちを繰り返すのだろうか。

 ここは、私たち人類の――墓場
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