僕ら芸人は

文字数 471文字

 ようやくイジメが非難されるようになった時代に――

「僕らの芸は、みんなの不満を代弁することにあるんです」

 僕らは、世の中の変化についていけない人々の鬱憤を晴らすためにネタをやっている。
 僕らは時代の流れを批判している。みんなに寄り添っている。

 ときどき度を越して激しく怒られたら、
「人を傷つけない芸なんてあるんやろか」
 先輩がかばってくれる。

 僕らは正しいことをやっているつもりだ。それでも時代の不文律に触れたから怒られる。なにも悪いことをしていないのに怒られて不本意だ。
 いままでどおりのことをやっているのに。これが駄目だというのなら、どうやって稼いでいけばいいのか。廃業だ。

 こうして今日も僕ら芸人は、イジメをマネタイズしている。そうしないと食っていけない。テレビじゃ怒られるから、ユーチューバーもやっている。

 そうして今日も世の中は、他人をお笑いにすることで回っている。世の中はこういうもの。みんなが僕らを見て気分を晴らして、僕らの真似して楽しんでくれる。

 そうして今日もまたひとり、死んでいる。それもいつものこと、僕らは思っている――
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