生の葛藤

文字数 1,073文字

 人は最強ではない。
 人はヒトである。ヒトという動物である。地球の一部であり宇宙の一部でありその相関関係のなかでのみ存在している。生態系の一部である。
 やがて死ぬくせに、生きていようとする。その欲望が異様に強い動物である。めんどくさい。
 なにかにつけてめんどくさい。
 生きているためには、栄養補給もせねばならないし、疲労からも回復しなければならない。
 不調があると痛む。
 あんまりにも痛いから死にたくもなるくらいだ。いかにも苦しい生き物である。

 権力者にこびへつらって生きている人間がいる。社会に「適合」して生きている人間がいる。
 さて、権力者に、社会に、なついて頭を下げてヤラレっぱなしになって生きている。
 その痛みはどこにいくのだろう。

 かなりのヤツは、自分より弱い人間を見つけようとしてマウントをとりにいく。かくして傷つけ合い争い合い、そして他人に痛みを押しつける。
 他人の悪口を言いふらしたり、他人に怒ったりする。

 ではそうしないためにはどうすればいいのか。
 こんなマウントの取り合いの世の中を直してしまえばいいのだが、人は誰しも最強ではない。
 
 痛みを忘れていられないものか。
 かくして人は中毒になる。
 ときに性欲に取り憑かれる。セックス依存性。
 食欲に取り憑かれる。必要以上に栄養補給をしてしまい、それを吐き、結局は自身のためにならないからやってしまった自分を悪く思い、自己嫌悪に陥る。
 賭博に依存したら脳内ホルモンがバァーっと出る。借金までしてしまい、そのヤバい現実が危ないからなおさらに、それを忘れるために依存してしまう。

 ときに薬物依存になる。相手はエタノールとかなんとかの薬物である。ヒトの肉体は薬物に操作される。

 下手に薬物に耐性がある人間ほど、やめられない。それはそうだ、耐性がなければ薬物に酔えないで倒れてしまう。
 摂取量が増えていく。薬物でも足りなくて、酔った勢いで自制がきかなくなり暴れ散らす人間も多い。こういうのは、薬物を止めてもやっぱり、暴れ散らしたい欲求は止まらない。その欲求がどこから沸いてくるのかといえば原因があるはずだ。それは社会環境にあることが多い。

 このままでは生きていけないから痛む。腹が空く。怒りが沸いてくる。さびしくなる。他人にマウントを取られるのが気に食わない。イジメられたら目下をイジメる。

 人は最強でありたいと望む。薬物にすら勝ち、自分に勝ち、自分を支配しようとする。

 もちろん負ける。

 いずれ死ぬのにめんどくさい生物である。どれほどまでに生きようとする本能が過剰なのか。

 哀しいものだ。
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