正しい革命運動

文字数 890文字

「希望より怒りをもたせるほうが効果的だそうです」
 研究結果ではそういうことのようだ。
「たしかになあ。『パンがなければケーキを食べればいいのに』ともいうものなあ」
「フランス革命ですか」
「しかしマリアテレジアの娘がそんなこと言うとは思えないわけだけど。これも噂、デマってことなんだろうね。煽動したのがいたのかもね」
「近ごろはエリートというレッテルを貼るのも流行りましたものねえ。相変わらずのやり口ですね」
「怒りを煽るのは効果的だろうけれど、昔から繰り返されてきた、創造性のない謀略活動だよ」
「なんでですか?」
「怒りというのは自衛本能。つまりエゴの最も強い発露。敵をでっちあげて、そいつに怒りを振り向けさせ、自分は正義の味方気取りをさせる。そういうエゴイズムだ」
「はい」
「それで体制を転覆させても、新たな体制が自分の気にくわなければまた、同じようにして革命を煽る。その繰り返しだからだ。エゴイズムの張り倒し合いだよ」
「たしかに今も世界中に、同じのことの繰り返しで政情がよくならない国がありますね」
「結局、支配者と民衆の二極構造ではおんなじことの繰り返し」
「では、その二極構造をなくせばいいんですね」
「そう、それがデモクラシー。民衆が自ら支配権をもてばいい」
「でもそうすると、民衆が政治をやるには、頭がよくならないといけませんね」
「そう。だから教育が要る。それと情報公開も」
「あー、それって独裁政治がゼッタイやらないことじゃないですか(苦笑)」
「そうなんだよねー。デモクラシー革命を起こそうと思っても、『ニワトリとタマゴ』なんだよねー」
「新しく、座った権力者が政治を変えないとムリですね」
「そうなんだけど、一度権力獲ってしまうと惜しくなって、握って離そうとしない。自分に都合のいい政治にしちゃう。やっぱエゴイズム」
「あぁ、だからおんなじことの繰り返しなんですね」
「そう。で、エゴイストのまんまの民衆を突き動かすには、怒りを煽って暴動を起こさせる。それで革命を起こす。だからいつまで経っても成長しない」
「……詰んでますね」

 ――結局、活動には怒りよりも何が効果的なのか。
 答えは出なかった。
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