第166話太と平野家

文字数 1,312文字

圭太と芳香は、伊豆長岡で土産等を買い、午前11時半に月島のマンションに帰った。
三島駅で買った駅弁「あじ鮨」「あまご寿司」を昼食として、仲良く分け合って食べる。

芳香は、花のような笑顔。
「私、築地育ちなので、こういうお寿司のお弁当大好きです」
圭太も食が進む。
「なかなか美味しい、日本人には合う」

芳香は、圭太の顏をじっと見る。
「古いのかな、ハンバーガーとか好きになれないんです」
「だから圭太さんのお弁当も、昔ながらで」
圭太は、ふんわりと笑う。
「美味しいよ、本当に、生き返るような味」
食べ終わり、一緒に片付け。
(芳香は圭太の手際の良さに、また感心)
「圭太さん、すごくキチンとして、感心します」
圭太は苦笑い。
「学生時代のバイトかな、そこで鍛えただけ」

片付けも終わり、少し休んでいると、玄関のチャイムが鳴った。(予定時刻の10分前)
インタフォンから芳香の父保の声。
「少し早いですが、平野です」

圭太は、落ち着いて、玄関を開けた。
「お待ちしておりました」

平野保と和美(芳香の両親)が入って来たので、ソファに誘導。
緑茶を丁寧に淹れ、それぞれの前に。(平野家は親子三人並んで圭太の前)

圭太は深く頭を下げた。
「本来は、私から平野家にお伺いするのが筋ですが、格別のご配慮で」
「芳香さんとのことを、ご了承いただきたく思います」
「幸せに、お誓いいたします」

平野保は、感極まったような声。
「いえ、ここでとは、こちらの希望」
「なにとぞ、不出来な娘ですが」
「可愛がってください」

和美が目を潤ませて、圭太の手を握った。
「圭太君ならと、ずっと思っていました」
「芳香は、圭太君でないとだめなの」

圭太は、深く頭を下げるだけにした。
余計な(既に両親がいない)は、言うべきではないと思った。
(父隆と芳香のことで、平野家を苦しめることは出来ない)

芳香が、スッと圭太の隣に座った。
「こうしていると、すごく落ち着くんです」
(圭太も、肩の力が、抜けた)

平野保が、圭太に頭を下げた。
「お父様とお母様にも、挨拶をしたいのですが」
圭太も頭を下げて、仏壇に平野家を案内。
それぞれが線香をあげ、手を合わせた。(和美と芳香は、泣いていた)

その後、圭太たちは、連れ立って佃住吉神社に「報告」。
(圭太と芳香が参拝する後ろで、平野保と和美が、圭太の両親の写真を持った)

その後、再び、圭太のマンションに、全員が戻った。
具体的な、今後の話になった。
圭太は冷静な口調。
「正式な結納、結婚式、披露宴については、お互いの仕事もありますので、今後相談させていただきます」
「キチンとしたい、その気持ちでおります」

保は、和美、そして芳香の顏を見て、笑顔。
「私たちは、今日からでも、かまいません」

圭太が戸惑っていると、和美がやわらかく笑った。
「圭太さんがいいなら、今夜からでも構わないの」
「結納とか式とか、圭太さんに任せますよ」
「芳香は、もう、圭太さんの嫁ですから」
「そのまま結婚指輪でもかまいません」

保も続いた。
「世間体を気にして、大騒ぎする時代ではないです」
「圭太君と私たちが納得すればいいだけのこと」

和美は、また涙ぐむ。
「早く孫を抱きたいなあと、隆さんと律子さんの前で」

圭太は、あまりの展開で、戸惑っている。
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