第3話 大魔女視点 根源への希求

文字数 646文字

 日が暮れ、一日が終わる。魔女イレイナは眠った修道女を見守りながら魔法を唱えていた。

「未来が視えん。あるいは……悲願が叶うのか?」

 大魔女として君臨して半世紀経った。目的のものは一向に見つからない。
 あるいは此度の邂逅をきっかけに見つかるかも知れない。これまで未来を予見することなど造作もないことであった。
 だが、此度は視えない。

「根源がわたしの未来に存在する最期の機会だ」

 決して逃がしてはならない。全ての人の悲願でもある。

 かつて教皇庁も正教会も隠匿した神秘の根源。

「聖ペトロ、聖パウロ、彼らは根源へと近付きすぎた。ゆえに世から処断された。今も尚、教皇庁に痕跡が残るとすれば」

 あるいは神秘を隠匿したゆえに。彼ら権力者は過度に真理を恐れる様になった。

 なぜ自分は根源に近付くことが許されないのだろう?

 歴史はなぜ万物が希求せし真の根源をなぜ希求してはいけなかったのだろうか?

 英国王立教会は黙秘した。プロテスタント教会もそうだ。

 なぜだ? 真理を探究するのは禁忌だとでも言うのか?

 この少女は根源へとたどり着くきっかけになるだろうか?

「やれやれ……こちらの気も知らず寝ておるわ」

 明日から忙しい。

「寝顔は愛くるしいな」

 この無垢な少女に何の価値があるのかは判らない。しかし、きっかけにはなった。その点は感謝しよう。

「お休み、エレイナ嬢。若人は良く眠って夢を見よ。年寄りが見るのは幻だ」

 夕闇に映るは水月だ。どちらがおぼろげなのかは判らない。

 それはきっと自分が終わる時に明らかになるのだ。
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