第8話 修道女視点 決別

文字数 531文字

 あれから瞬く間に条約の調印が終わった。あっけない。率直な感想だった。かのスペインもブリタニアの誇る大魔女には勝てなかったか。
 
 だが、それ以上にあの圧倒的力はあらゆる世界の脅威になる。友を見捨て教皇庁に差し出す手もあるが、それは非道であった。

 海上に漂う船の中にいて思案する。彼女を止めなくてはならない。

 力を得た者は皆失うことを怖れる。

 彼女はどの様な表情をするだろうか?
 彼女を止めるのが私の責務なのだ。今ここに使命の確信を得た。我が信仰は愛する者を救う為でもある。

「エレイナ嬢、黄昏ておるな」
「イレイナ船長……私はあなたが怖いです。世界を揺り動かせるあの力は何ですか?」
「まあ、大魔女だけはあるじゃろ?」
「あなたの力は危険すぎます。教皇庁に至急報告させて頂きます」
「そうか、これでようやく舞台が整う訳かえ」
「ですが、その前に訪ねたいのです。あなたは力を封印するつもりはありませんか? 封印さえ出来れば教皇庁も穏やかに対応します」
「それは出来んよ。エレイナ嬢、力とは得た瞬間に使いたくなるし、失うのも怖くなる。主人が奴隷を解放してしまえばいつの日か主人に牙をむく可能性もある。その様に世界とは不寛容で出来ているのじゃ」
「そうですか……あなたは良い友でした」
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