第5話 大魔女視点 運命の皮肉

文字数 799文字

「戦争か……」
 
 遂に来たというより他ないだろう。となると予測が少し異なる。最初はあの少女が引き金になり、根源との接触を図れるのかと推測していた。

 しかし、結果のみ視ればこの戦争を通して教皇庁の誰かと接触する可能性もある。

「未来を視すぎるのも考えものか……」

 未来を視て予測を立てる。これに慣れ切ると自分で考える頭が鈍くなる。便利な魔法も考えものなのだ。時として力は人を腐らせる作用がある。

「矛盾しているな……」

 力を欲することは間違いかも知れないと思う時もあるが、逆に力を求めなければ均衡を保てないという現実もある。どちらが正しいのかなど決着はつかない。
 
 明日を思い煩うな、とはよく言ったものである。明日を予見するのは罪なのだろうか? では先見者と呼ばれる存在はどうなるのか? これまた矛盾する。つまるところ人は矛盾しているのだ。

「どれほどの艱難があろうとも審判者は来たり。全てはあまさず厳しく問い糺されるであろう。かの日、涙と栄光の日なり」
 
 古い慣用句を自分なりにまとめたものだが、今の自分にふさわしいのだろうか。

「私は信徒の様に待ち続けることは出来ない。だが、あの少女は待つであろうな」

 脳裏に思い浮かぶはあの修道女。何とも言えない。無垢なのであろうか?

 それとも頭は良いのは確かだ。彼女は信徒として非常に勉学にも励んでいただろうし、自分と議論出来るのは素晴らしいことだ。だが、肝心の神秘がない。神はあの様な者には力を持たせないということなのであろうか?

「力ではなく神の御心を求めるか……」

 それは決して安易な道のりではない。これから先、あの少女は幾千もの挫折を味わうであろう。それでも立ち上がれるのか。その辺りは興味深いと感じていた。

「全てが終わった時の関係も気になるな……」

 根源を求める者と神の御心を求める者。相容れそうで相容れないかも知れない。

「全く……運命とは常にふざけている」
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