第6話

文字数 1,512文字

 ミスった……。たった二日前に再来週から夏休みって言ったのに明々後日にはもう入る。

 わかった時には奈緒に横っ腹抓られて親父が帰ってきても一週間ほど天宮家でお世話になることで手打ちにして許してくれた。絶対夏休みが始まる日知ってて言ってたろ……。

「で、お姉ちゃんはどうしたのよ。陽太」
「絶対知ってて言ってるでしょ莉緒」
「さぁ? どうかしらね」

 教室に来てすぐ昼休みの飲み物をパシリに使うという罰ゲームをかけ、五回勝負した結果が見事に惨敗。華々しいほどに三連敗して昼休みになった今買いにパシってるわけなんだけど、購買部へついてすぐ莉緒に声をかけられて話している最中なわけだ。

「で、あんたはお姉ちゃんに何をパシられているわけ?」
「知ってたんなら話しかけないでくれよ……奈緒の性格知ってるでしょ」
「べ、別にそんな話してないじゃない。なに? お姉ちゃんとは話してあたしとは話したくないっていうの?」
「そんなことは一言も言ってない。むしろ莉緒と話ができて嬉しいよ」
「なら話してもいいでしょ」

 何このツンデレ女子みたいな女の子。奈緒がいなかったら絶対に惚れていただろう。
 奈緒がいたとしても、奈緒より先に出会ってたら

惚れてる。

「じゃあそろそろ行くよ」
「お姉ちゃんに言っといてね」
「りょーかい」

 一分二分程度軽く話した後、してされた飲み物を買い、奈緒がいる教室へ戻った。

「ごめん奈緒。遅れた」
「莉緒と話してたんでしょ? なら許す」
「お、そういえば陽太。お前、なんでこいつのこと名前で呼んでんだ?」

 ……今それをいうのか。というか気付いて言わなかったんじゃなかったのか。

「察したらどう? あたしはあんたよりよーたの方が大事だから呼んでもらうことにしたの」

 はて……? これは告白と受け取ってよろしいのでしょうか神様仏様天宮様。

「えぇ……この間、妹のこと莉緒ってよんでるからっ……つっ……」
「余計なことは言わないでいいの」
「だからって僕の横っ腹抓られないでよ奈緒……」

 第三者である光から見たらいちゃいちゃしているように見えたのだろうか、間をおいて「なぁ、お前らそんないちゃつくなら付き合えよ」って言い出した。

 ぼ、ぼぼぼ僕と奈緒が付き合うなんて滅相も無い!

 とてもじゃないが、幸せにできる自信が全く無い。

 むしろ幸せにできるだろとかいう人たちがいるなら聞きたいことくらいだ。

「ばばば馬鹿なこと言わないでよ! あたしとよーたが付き合うなんて!」
「なんでお前がそんなテンパってんだよ」
「……」

 え? え? ちょ、ちょちょ。ほんと、なんでそこで奈緒は顔赤くするの? 後なんで黙るの??





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 やばい。非常にやばい。
 奈緒が沈黙してからは変な空気が流れてクラスにいたみんなも帰ってきたみんなも察して黙ってるしこの沈黙が十分続くのはキツすぎる。

「覚えてなさいよ()!!」
「覚えててやるよ()()

 お互いが名前呼びしたことに安堵した僕はつい、「名前呼びしてんじゃん」と二人に向けて言ったら、ハッと我に戻った二人は冷静なのか焦ってるのかわからないが二人して僕の方を睨んできた。

 え、突っ込んじゃダメなとこだったの?

「ご、ごめんなさいよーた。そんなつもりじゃ……」
「すまん陽太」
「いやいや、なんで二人が謝るの? 逆に僕が謝らなくちゃいけないのに」

 詮索はしないけどまあ光と奈緒の間で何かがあったんだろう。そこは詮索しないほうが吉だと思う。
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