第4話

文字数 2,047文字

「……は?」

 何事も特に起きることなく学校が終わり、奈緒の家まで歩いて自転車取り行き、家に帰ると、親父が神妙な面持ちでいた。

親父に「どうした?」と問いた所、「ほんとは明日からだが、お前的には今日からの方が良さそうだから荷物簡単にまとめて天宮さんのうちに行け」と言われた。

 自分の気持ちを正直に言うと、半分呆れ半分嬉しさでどう表現していいのかわからないが、ただ一つ言えるのは、どうしてそうなったん? としか言いようがない。

「聞こえなかったのか?」
「いや、聞こえてるよ。でもなんで奈……天宮さんの家に僕の荷物持ってかなきゃ行けないんだよ。理由もなしに」
「理由はもちろんあるさ」
「……なに?」
「お前と千夏がまだ小さかった頃、お父さんはよく海外に行く時、よくしてもらってた家に泊まり込んで行ってただろ?」
「誰にも相談しないで行ってたな。……ってまさか、また長旅行くとか言い出すなんてことはないよな? 母さんの命日も近いってのに」
「もちろんわかってる。行くのは母さんの命日の次の日だ」
「ならいい。それなら千夏や僕。それに母さんも安心する」
「そうか! なら早速……」
「……がそれは建前なのはわかってる。本当の理由を教えてくれ親父。もう千夏を泣かせたくないんだ」

 僕が中学の頃は親父の何を生業としてる仕事かまでは把握してない。

けども、親父は世界各国飛び回るようで、それが中学の頃は安定したのか、ずっといてくれた。

まあ、お金に関して言えば苦労しなかったし、中学入るまで五つ上の姉が僕と妹の千夏の面倒をしっかりと見てくれてたこともあってかなんとかやってこれた。

まあ、よくしてくれてたおばさんとおじさんとこに厄介になりながらだけど。

 自分で言うのもなんだけど、あの当時、海外ばっかりに行く親父とおじさんたちを除いて身の回りにいるのが僕一人ということもあって、多分姉ちゃんは頑張った自分以上に頑張ったというか気を張ってたのだと思う。

 そんなこともあってか、妹の千夏同様に姉ちゃんには頭が上がらない。
 僕や千夏もそこそこ頭が良いはずなのに姉ちゃんはズバ抜けて頭が良い。

「……いや、やっぱり話さなくて良いよ。親父のことだから天宮さんに入ってると思うし、理由はしょうもなさそうだから」
「しょうもなさそうってんだよ……」
「親父。あんたが今までしてきた行いが招いた結果がこれだ。僕も千夏も姉ちゃんも別に何も期待してない」
「千紘もか…」
「そういうことだから荷物はそんなないし服とかは下ろしたお金でやりくりするから。母さんの命日まで」
「……じゃあな」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「かくかくしかじか色々あったのでこれからは厄介になります」

 土曜までの替えのパンツと大事なものをリュックにしまって天宮さんもとい天宮家に時間も時間だったから自転車で急いで向かい、到着してすぐ莉緒が「なんでうちに来てんのよ!」と騒ぎ出す始末だったが、事前に知ってたおばさんが莉緒を宥めるついでにしばらく厄介になることを事細かく説明してくれた。

さすがは大人。親父にも見習ってほしい。

「好きにして良いけど絶対あたしの部屋に入んないでよね!」
「なんで?」
「……っ!! なんでもよ! わかったなら返事!」
「了解だ」
「あ、あたしの部屋には入って良いけど部屋をジロジロ見ないでね?」
「わかった」

 用事で僕より遅く家に戻ってきた奈緒は事前におばさんから聞いてたのだろうか、僕の持ってきた荷物を確認するや瞬時に対応してくれた。

 この姉妹の対応の違いはなんなんだ……。

「そうね……。陽太くんの部屋はどこが良いかしら?」
「んん~……あたしの部屋で一緒に寝たらいいんじゃない?」
「ダメよ。そうしたら陽太くんの身がもたないじゃない」
「はぁ~い」
「パパの部屋でいいんじゃない? パパなら喜んで貸すだろうし」
「あら、莉緒は一緒に寝る! って言わないのね」

 ……え? 僕が莉緒と寝る? ないないない。奈緒はいろんな意味で危ないし意識とか諸々でやばいからないとして莉緒と同じ部屋で寝るってのは一番ないかな……?

「言うわけないじゃない! 誰がこんなゲテモノと!」
()はあんなによーにぃと寝るの! なんて泣いてたのにねぇ? ママ」
「そうねぇ……。ずいぶん変わったものね」
「……ん? よーにぃって誰のことなんですか? おばさん」
「ああ、そうだったわね。気にしないで?」

 よーにぃ? 誰のことだ?
 それになんだ……このモヤモヤは……。変な感じする……。

「じゃあ僕はこれで……色々あって疲れたんで寝ます」

 そりゃそうだ。朝方には奈緒の胸で窒息しかけのとこで起きるし、早朝なんかに至ってはキスするし、突然天宮家でどれくらいかはわからないけど奈緒や莉緒、おばさんと同棲というか住まなきゃいけない。

 情報量多すぎとしか言いようがない。
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