第1話
文字数 2,406文字
「ーーん。おーい」
ぐっすりと眠りについている亜麻色の髪に加え、両耳に付けている銀のピアスが僕の中ではトレードマークになっている小悪魔系ギャルこと天宮奈緒を起こそうと数分前から呼びかけているがピクリとも反応がない。
というかむしろ清々しいほどにぐっすり寝てるからこのまま置いておくのもありなのかもしれないけど、現在十七時前。
部活に行っている先輩や後輩、同輩も部活で使った用具の片付けを済ませて矢継ぎ早に校門をくぐって帰路についてる。
つまりは下校時間なのだ。
そんなこともあってかれこれ数十分前から呼びかけてる。
肩なんかを触ってるところを運悪く教室を見た三者に見られでもしたら、セクハラだ! とかって言われてしまいそうだし、何よりセクハラだ!って言われなくても恥ずかしくて触れない。
起こそうと思って呼びかけてるけど、二人っきりだから内心めちゃくちゃドキドキしてるし顔熱いから起きないでとも思ってる。
すると、いつから起きていたのか、いつものように僕の方を向き、ニヒルな笑みを浮かべながら訪ねてきた。
「ねぇよーた。なんで何もしないの?」
「そりゃ……天宮さんは女子だし……っていつから起きてたのっ!?」
「いつからだろうね〜……あ、じゃあいつから起きてたか当てたらご褒美あげる」
「デメリットしかないように思うんだけど……気のせいなのかな」
「気のせいだよ。ご褒美……欲しくないの?」
「……欲しくないなんて言ってない」
「そんな大声で言わなくてもわかってるよ。相変わらずよーたってかっわいい反応してくれちゃうんだから」
「くっそ……」
「ん〜……そうだな。ご褒美何がいいかな……よーたは何がいい?」
「ぼ、僕に聞かないでよ! ……それにか、顔! 近い!」
天宮さんがどういう人かを忘れて考えていると、気付かない間にほくそ笑みながらもうちょっとでキスをしてしまいそうな距離までグッと顔を近づけてきた。
小悪魔め……。
「顔赤いけど何考えてたの?」
「あ、天宮さんのことなんて考えてないよ!」
「へぇ〜? ……そういうことだったんだ」
くぅ〜……! はめられた!
「……はっ!! ち、ちちちがう!」
「ま、そういうことにしといてあげる」
「……帰る!!」
「え〜……それじゃあ意味ないじゃん。待ってよよーた」
約一年前、入学当初から隣の席で進級して二年になった今の今までもクラスは同じだし、必ず隣の席に座っている天宮さん。
一年の一学期二学期は、学校で隣の席ということもあって学校で話す程度の関係だったけど、三学期が始まってから一二週間が経ったある日から外でもよく会うようになり、連絡先も交換して遊ぶようになった。
もちろん、今も現在進行形で何か天宮さんの方から僕に用があったら連絡が入ってる。
天宮さんの方から連絡があっても僕から天宮さんにってことはこの1年間で一回か二回程度。
女子の連絡先が天宮さんだけだから恥ずかしくて本当に用事がある時以外は滅多にしない。
それは何故か?
そりゃあ、天宮さんのことがす、好きだからだ。
現に今も変に意識してる。
今もずっと心臓ばくばくだし、この気持ちを好きな相手に悟られたくないというのもある。
それに僕のことをよーたって呼ぶのは数少ない。
母さんはまああれは何かと特殊だから置いておいて、姉ちゃんと妹がよーたって呼ぶくらいだ。
その他は、まあ名字呼びだ。天宮さん以上に仲良い人もいないっていうのもあるけど……。
じゃあ僕はなんで天宮さんのことを名前で呼ばないのか。
それは至って単純。
『恥ずかしい』からだ。
もちろん、名前で呼びたいっていうのもあるけど、なんでか謎の抵抗があって呼べない。
それに全てにおいて地の底な僕が急に天宮さんのことを奈緒! って呼んだ時にはああそういうことなんだなと周りに思われては天宮さんに悪い。
まあ思われることなんて万に一つもないんだけど……。
なんたって登校時以外はなんでかはわからないけど、ほぼほぼ天宮さんが僕の側に居てくれる。
「どこまでついてくんのさ」
「駐輪場まで?」
「その?っていうのはなに?」
「だってよーた 付いてかないと逃げるでしょ?」
「ヨクワカッテラッシャル」
天宮さんから逃げるために離れようとするが、逃げることが出来ずにぴったりとついてくる。
その上、図星を突かれる。
「……それにまだよーたと一緒にいたいもん……」
「なに?」
「なーんにもっ! それにまだ前の罰ゲーム続いてるしねっ」
「罰ゲームって一週間自転車で送り迎えするってやつ?」
「そ。約束でしょ?」
……そういえばそんなこともあった。
確かテストの総合点で負けた方が送り迎えするっていう。謎の罰ゲーム付きで。
自信満々だった僕は安易に受けたけど一点! たった一点の差で負けてしまった。
せっかく猛勉強して勝てると思ったのにだ。というか、むしろ十点とか大幅に点差つけられてたらすごいショック受けることもなかったんだろうけど、一点だからなぁ……。
その罰ゲームを今週の月曜日から執行されて送迎してるわけだけども、変に思われてないだろうか……。
何度か髪型で笑われたりもしたけど……。
「そういえばさよーた」
「なに?」
「夏休みっていつからだっけ?」
「確か再来週とかじゃなかったかな。それがどうしたの?」
「ん〜……今年もよーたにお願いすることになると思うから。去年は無理だったけど、今度は前もって言っとこうって」
「まああれは急だったから流石にね……。行きたかったのは山々だけど」
「ふぅ〜ん。そういうことにしとこっかな」
ぐっすりと眠りについている亜麻色の髪に加え、両耳に付けている銀のピアスが僕の中ではトレードマークになっている小悪魔系ギャルこと天宮奈緒を起こそうと数分前から呼びかけているがピクリとも反応がない。
というかむしろ清々しいほどにぐっすり寝てるからこのまま置いておくのもありなのかもしれないけど、現在十七時前。
部活に行っている先輩や後輩、同輩も部活で使った用具の片付けを済ませて矢継ぎ早に校門をくぐって帰路についてる。
つまりは下校時間なのだ。
そんなこともあってかれこれ数十分前から呼びかけてる。
肩なんかを触ってるところを運悪く教室を見た三者に見られでもしたら、セクハラだ! とかって言われてしまいそうだし、何よりセクハラだ!って言われなくても恥ずかしくて触れない。
起こそうと思って呼びかけてるけど、二人っきりだから内心めちゃくちゃドキドキしてるし顔熱いから起きないでとも思ってる。
すると、いつから起きていたのか、いつものように僕の方を向き、ニヒルな笑みを浮かべながら訪ねてきた。
「ねぇよーた。なんで何もしないの?」
「そりゃ……天宮さんは女子だし……っていつから起きてたのっ!?」
「いつからだろうね〜……あ、じゃあいつから起きてたか当てたらご褒美あげる」
「デメリットしかないように思うんだけど……気のせいなのかな」
「気のせいだよ。ご褒美……欲しくないの?」
「……欲しくないなんて言ってない」
「そんな大声で言わなくてもわかってるよ。相変わらずよーたってかっわいい反応してくれちゃうんだから」
「くっそ……」
「ん〜……そうだな。ご褒美何がいいかな……よーたは何がいい?」
「ぼ、僕に聞かないでよ! ……それにか、顔! 近い!」
天宮さんがどういう人かを忘れて考えていると、気付かない間にほくそ笑みながらもうちょっとでキスをしてしまいそうな距離までグッと顔を近づけてきた。
小悪魔め……。
「顔赤いけど何考えてたの?」
「あ、天宮さんのことなんて考えてないよ!」
「へぇ〜? ……そういうことだったんだ」
くぅ〜……! はめられた!
「……はっ!! ち、ちちちがう!」
「ま、そういうことにしといてあげる」
「……帰る!!」
「え〜……それじゃあ意味ないじゃん。待ってよよーた」
約一年前、入学当初から隣の席で進級して二年になった今の今までもクラスは同じだし、必ず隣の席に座っている天宮さん。
一年の一学期二学期は、学校で隣の席ということもあって学校で話す程度の関係だったけど、三学期が始まってから一二週間が経ったある日から外でもよく会うようになり、連絡先も交換して遊ぶようになった。
もちろん、今も現在進行形で何か天宮さんの方から僕に用があったら連絡が入ってる。
天宮さんの方から連絡があっても僕から天宮さんにってことはこの1年間で一回か二回程度。
女子の連絡先が天宮さんだけだから恥ずかしくて本当に用事がある時以外は滅多にしない。
それは何故か?
そりゃあ、天宮さんのことがす、好きだからだ。
現に今も変に意識してる。
今もずっと心臓ばくばくだし、この気持ちを好きな相手に悟られたくないというのもある。
それに僕のことをよーたって呼ぶのは数少ない。
母さんはまああれは何かと特殊だから置いておいて、姉ちゃんと妹がよーたって呼ぶくらいだ。
その他は、まあ名字呼びだ。天宮さん以上に仲良い人もいないっていうのもあるけど……。
じゃあ僕はなんで天宮さんのことを名前で呼ばないのか。
それは至って単純。
『恥ずかしい』からだ。
もちろん、名前で呼びたいっていうのもあるけど、なんでか謎の抵抗があって呼べない。
それに全てにおいて地の底な僕が急に天宮さんのことを奈緒! って呼んだ時にはああそういうことなんだなと周りに思われては天宮さんに悪い。
まあ思われることなんて万に一つもないんだけど……。
なんたって登校時以外はなんでかはわからないけど、ほぼほぼ天宮さんが僕の側に居てくれる。
「どこまでついてくんのさ」
「駐輪場まで?」
「その?っていうのはなに?」
「だってよーた 付いてかないと逃げるでしょ?」
「ヨクワカッテラッシャル」
天宮さんから逃げるために離れようとするが、逃げることが出来ずにぴったりとついてくる。
その上、図星を突かれる。
「……それにまだよーたと一緒にいたいもん……」
「なに?」
「なーんにもっ! それにまだ前の罰ゲーム続いてるしねっ」
「罰ゲームって一週間自転車で送り迎えするってやつ?」
「そ。約束でしょ?」
……そういえばそんなこともあった。
確かテストの総合点で負けた方が送り迎えするっていう。謎の罰ゲーム付きで。
自信満々だった僕は安易に受けたけど一点! たった一点の差で負けてしまった。
せっかく猛勉強して勝てると思ったのにだ。というか、むしろ十点とか大幅に点差つけられてたらすごいショック受けることもなかったんだろうけど、一点だからなぁ……。
その罰ゲームを今週の月曜日から執行されて送迎してるわけだけども、変に思われてないだろうか……。
何度か髪型で笑われたりもしたけど……。
「そういえばさよーた」
「なに?」
「夏休みっていつからだっけ?」
「確か再来週とかじゃなかったかな。それがどうしたの?」
「ん〜……今年もよーたにお願いすることになると思うから。去年は無理だったけど、今度は前もって言っとこうって」
「まああれは急だったから流石にね……。行きたかったのは山々だけど」
「ふぅ〜ん。そういうことにしとこっかな」