第3話

文字数 2,748文字

「「「「ごちそうさまでした」」」」

 天宮さん(姉の方)の部屋に鞄を置いて部屋を物色するわけでもなく、すぐに部屋を出てリビングへ向かう途中、天宮さんから「変なとこ見てないよね?」と再三にわたって言われた後、天宮さんと一緒にリビングへ向かい、大好きなカレーを天宮さん、莉緒、おばさん、僕の四人で楽しく談笑しながら食事をした。

「美味しかったよ天宮さん」

 天宮さんというと、三人がピクッと反応した。
 僕としたことが、うっかりしてた。
そういえば、全員()()だった……。

「……あたしのこと莉緒って呼ぶんだからお姉ちゃんのことも呼び捨てにしなさいよ」
「あ、それいいねっ! うんうん! あたしのこと奈緒って呼んで!」
「え、あ、いや……その……」
「なによっ! まさか呼べないってことはないでしょ?!」
「うふふ。落ち着きなさい莉緒。これは陽太くんの

なんだから」
「……は~い」

 なにやらご立腹の莉緒。
 どうやら自分だけがまだ名前呼びなのが納得いってないらしい……やれやれ……とんだお嬢様だ。
 
「よーた。あたしの作ったカレーどうだった? お口に合った?」
「合うも何もものすっごく美味しかったよ! ……奈緒!」

 ああ……やっちゃった。
 俺の人生詰んだわ……。

 ……ん? 天宮さ……奈緒の顔が赤いような……? 気のせいだよな?

「……はぁ。このど天然色ボケ男が、女にとってそれは告白されてるみたいなものなのよ?」
「え? そうなの? 美味しかったから正直に言っただけなんだけど……。なんかまずいこと言っちゃった?」
「ま、そんなあんただからお姉ちゃんも……」
「わー! お風呂できたみたいだから莉緒! 久しぶりにお姉ちゃんと入ろっか!」

 えぇ……。そんなことある?
 莉緒が何かを言い終える前に奈緒が莉緒の口を塞いで喋れないようにしたまま引っ張るようにリビングを出てお風呂場へ向かってった。

「なんかまずいこと言っちゃったのかな……」
「ふふふ。とっても良い方向に向かってるから良いのよ? だからそんな不安そうな顔をしないであげて?」
「わ、かりました……」

 奈緒が莉緒を連れてお風呂に行れていったあと、少しだけおばさんと話した。

その後、眠気が急に襲いかかってきて、欠伸しながら寝ますとおばさんに言いながら二度お辞儀をしてリビングを出た。

リビングを出て二階に上がってる途中、奈緒と莉緒がお風呂に入っていることを想像してしまい、鼻を両手で覆いながら少し急ぎ気味に奈緒の部屋へ戻り、うとうとしかけてたこともあってか、座った後気付かぬ間にぐっすりと眠りについた。


 …………………………

 ……………………

 ………………

 …………

 ……

 「んっ……」

 なんだこの柔らかい感触は……。

 それに加えて今はもういない母さんの温もりのようなものも色っぽい雰囲気もどこからとなく伝わってくる。

 おそらく夜中なのだろうか、柔らかい感触等々感じながら目が覚め、目をこするわけでもなく、数秒の間ぼーっとした後、ハッと我に返って周りを見ると大好きな天宮奈緒の部屋で寝ているのだということを実感する。

 そんな中、違和感を覚えた柔らかい感触等々の原因は奈緒自身だったようで、どうやって俺を移動させたのかはわからないけど、今現状の状況を言うと奈緒のベッドで奈緒と一緒に二人で寝ている。

 奈緒はというと、うっすら見えた限りではぴっちぴちのスポーティーな服を寝間着がわりに来ていて、両手? 両腕? かで俺の頭をがっちりとホールドしており、豊満な胸で危うく窒息するであろう距離だった。

「流石に奈緒とは一緒に寝れないよ……。まあでも、気遣ってくれてありがと」

 それにさっきの状態だと心臓の音が伝わりそうで怖いし、ドキドキしすぎて自分じゃなくなる気がしてならない。

 ……だ……から、僕は……床で寝……よう。


「……撫でられたらこっちの方がどきどきすんじゃん……。……

のばか」








◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「よーた起~きろっ!」
「…………ぐへっ」

 早朝朝7半ごろ、どの体勢であの後眠りについたのかわからないけど、奈緒の元気な声とともに全体的にというか主にお腹にずしっと思い感触を感じ、目が覚める。

「よーた起きた?」
「起きたってn……」

 腹に痛みを感じて床で突っ伏していると、プレスをかけてきた張本人の奈緒が起きたかを確認しようと覗き混んできたところを姉ちゃんにいつもされてた後のように返事をして振り返ったのがミスだったのか、幸か不幸かはわからないが自分的には運が悪く、奈緒とキスをしてしまい、普段は気付くはずの足音にも気付かぬ間ぼーっとしてしまい、こともあろうことか一番最悪な人にキスをしている現場を見られてしまった。

「よーたとお姉ちゃんがキスしてるよママ!!」

 数秒間目が合い、すぐさま慌てるようにおばさんがいるであろう下のリビングへ向かっていった。

「莉緒これには深い事情があっ……」

 石像のように固まってる奈緒を他所に、おばさんに報告しに行こうとする莉緒を止めようと弁明しようとしたが、あっという間に再び唇を奪われ、濃いのか普通なのか経験したことない僕には現状をどう表現していいのかわからない。

「ちょっとまっ……」

 三度四度と唇を奪われた直後、どこかとろけた表情を浮かべながら奈緒本人は鞄を持って部屋を出ていった。

「……~~~~ッッッ!!」

 頭真っ白、この後なにしようか予定立てようと思ってたけど全部ショートしたかのように一瞬にして消え去った。

 なんというかもう僕、死んでも悔いないわと一瞬悟りかけた。

 お肌つるんつるんになって下に向かってった奈緒とは正反対にげっそり痩せ細った僕は弱々しい感じのまま、リビングへ向かった。

「何があったらそんなげっそりなんのよ……ほらっ水。飲みなさいよ………」
「ありがと……。朝なのに物凄く疲れた」
「そんなんじゃ自転車乗ってけないでしょ? うちにおいてていいから学校が終わったら取りに来なさいよ。……いいよねママもそれで」
「オッケーよ」
「ま、そういうことだからあんたは自力で歩いてきなさい。お姉ちゃんは私が連れてくから」


 オワタ……。今の僕ってそんなにげっそりしてるの?
 ……っとと、まあいいや。とりあえず奈緒の家から学校まで歩いて何分なんだ?
 今までずっと自転車だったから考えることなかったけど、遅刻は嫌だからもう出てた方がいいよな?
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