第12話

文字数 1,040文字

 姉の運転の元、僕と千夏、奈緒に莉緒、奏さん、朝いなかった筈の光の七人で思い出の地の近くの旅館に向かってるらしい。
 
 ……僕は記憶にないから初めて行くんだけど。
 
「で、なんで光はいるの?」
「お前のお姉さんから来いって連絡あったんだよ。思い出の場所に行くからって」
「いつ?」
「いつでもいいじゃねぇか。なんだ? 一人でハーレム築こうって思ってたのか?」
 
 千夏が光の言葉に首を傾げてる。
 
 ……首傾げる所あったか?
 
「ハーレムってなんですか?」
「さぁ……?」
 
 妹よ。
 いつから光と仲良くなってたんだ?
 会うのって今回が初めてなんだよな?
 いや、でも姉ちゃんが来いって連絡をしたってことだから妹の千夏も知っててもなんの不思議もない。
 
 ああ、でも僕が覚えてないだけで千夏や姉ちゃんまで知らないってことはないんだから僕がいないところで交流があっても腑に落ちる。
 
 なんで僕には黙ってたの? と疑問を抱くくらいは思ってる。
 
 そんなことを考えているとサイドミラーで僕の様子を伺ってた姉ちゃんが
 
「今じゃないと意味がないんだよ。陽太。中学の頃にでもあんたに真実を言ってたら壊れてたからね」
 
 そう言った。
 
 真実を知れば僕が壊れる?
 
 なんで? 思い出なんだから壊れるはずがない。
 ……でも姉ちゃんが壊れるっていうならそうなんだろう。
 
 姉ちゃんは間違ったことは絶対に言わない。
 
「ごめんねよーた。全部わかったら本当のこと話すから。ね? 莉緒」
「そういうことだからあんたは黙ってついて来なさい。いいわね?」
 
 奈緒と莉緒の言葉に姉ちゃんがククっと口角を上げて笑う。
 
「本当のこと話すって言ったって、薄々気づいてるんじゃないか? 陽太は」
「姉ちゃん!」
 
 なんとなく。本当になんとなくなんだけど、こうじゃないのか? ということは思ってる。
 
 でも、今ここで僕がそれをいうことはダメな気がする。
 
 ……なぜなら。
 
 ちゃんと向き合ってないから。
 
 今、誰ととは言わない。言えるわけがない。
 
 たとえどういう結果になったとしても、絶対にその選択をしてよかったって思う選択をしよう。
 
「着くからそろそろ準備しときなよ」
 
 姉ちゃんの言葉に「あいあいさー!」と全員が元気よく返事をした後泊まる旅館近くにある駐車場に車を止め、それぞれの荷物を持って部屋へ向かうのであった。
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