魔術の仕組み

文字数 665文字

冗談は置いておいて。

真面目な話、君は魔術の仕組みは理解しているんだろ?

ああ。

取り込んだ魔素に、強いイメージを与えることで魔素を変化させる。

イメージ形成の補助のために、小物を持ち歩く魔術師もいるらしいな。

……どうも、君たちは使わないようだが。

俺とスハイルは、魔術が当たり前の家に生まれたからなー。

親の持ってた道具を使ったことはあるけど、常用はしなかったかな。

僕は魔術の仕組みなんて知らなかったからね。

補助的な小物も持っていなかったし、感覚だけでやってきたよ。

秀才共め。
アレースさんの場合、きっと魔術を使う前に考えすぎるのでしょうね。

まず水面を波立たせるためには水を動かすのか、風を吹かせるのか。

そういうことを考えてしまうタイプでしょう?

そういえば子供の頃、白黒で描かれた野菜の絵を見て、

「これはピーマンかパプリカか」

なんて長考してたね。

別に食べるわけでもないし、誰かに聞かれたわけでもないのに。

それは……悩む案件ですね。

わかります。

(わかるんだ……)
そういうの考えるのって楽しいよな。
(いや、至極真面目に悩んでたんだけどな……)
……水か風か問題も、ピーマンパプリカ問題も、

思考が堂々巡りしてしまったら結論は出ないでしょう?

魔術を出力するためには、結論を出さないといけません。

アレースさんは、ここがちょっと苦手そうですよね。

取り込んでる魔素をうまいこと出力する方向に

持って行けてるかどうか、ってのも、あるかもな。

物理的に魔素を飲み込んでるから、魔素不足ってことはないはずだし。

結局、アレースに魔術は向いていないってことか。
まとめるな。
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登場人物紹介

スハイル-アルワズン

 魔術事務所世界/現代の主人公ポジ。

 代々魔術師を生業とするアルワズン家の次男。性格は温厚で、人当たりのいい好青年。

 出身はリエースの森。オラシェ街中の学校を卒業し、市街地の一画にある建物に部屋を借りて魔術事務所(便利屋)を営んでいる。

 魔術の腕は天才的だが、兄のレゴールがそれを上回るため、自分は凡庸だと思っている。が、難易度の高い魔術を使っている自覚はある。

 果物や紅茶が好物。口の中をズタボロにされたため、硝子魚は苦手。

 こんな顔をしているが体力は底なし。体もしっかり鍛えている。

レゴール-アルワズン

 代々魔術師を生業とするアルワズン家の長男。明るく賑やかな性格で、弟のスハイルを大切に思っている。

 オラシェ街中の学校を卒業後、リエースの森にあるアルワズン邸で暮らしながら魔術師協会からの依頼をこなしている。

 魔術の天才であり、発動速度もアルワズンの家系で1,2を争うほど。親しいものの前以外では魔術の行使を控えている。

 好きなものはナッツ。酒も好きだが、主に飲むのは紅茶。

 森から街まで歩いてくる。

アレース

 オラシェに住む魔術研究者。情熱とやる気はあるのだが、不器用なため魔術を使えたためしはない。

 基本的にニハルの経営する酒場「ヴィノー」に入り浸っているが、諸外国の魔術関係の史跡を巡る旅に出ることもある。持ち帰ってくる品々は品質が良く、本職の魔術師も垂涎もの。

 昔、旅の途中で自分を助けた魔術機関のことを気にしている。

 酒には強く、完全なるザル。エルムルイカの臭気は宿敵。

ニハル

 オラシェの裏通りで営業している酒場「ヴィノー」のマスター。意外とドジなところのある、無口でシャイな青年……なのだが、この4人でいるときには割と喋る。

 近年珍しい魔術師の孤発例。派手な魔術は使えないが、魔素そのものを弄っていろいろと遊んでいるようだ。

 アレースとは長い付き合いで、彼の希望で酒に魔素を溶かして提供している。意図せず飲み過ぎるアレースの体が心配な今日この頃。

 好物はエルムルイカ。日干しにしたものが店の奥に保管されている。

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