森帰り
文字数 1,004文字
……。
……。
兄さんとアレースさんの間に、微妙な隙間が……。
確か、レゴールさんに誘われて君の家に行くって言っていたけど……。
ちょっと俺この空気嫌だー！
と、言われても……。
俺、街にいる時よりも豪華な生活したかもしれない……。
一体何が……。
まず、家がとにかく広い。
そして人が多い。
土地はまあ、ありますからね。
リエースの森全体がアルワズンの所有地だったよね。
それは確かに広いよ。
人が多いのは、昔うちで雇ってた使用人がずっといるっていう。
今のところ解雇する理由もないってことで。
さすがに、新しく雇ってはいないけどさ。
それは異次元だ。
言っておきますが、祖父や曾祖父の代の話ではないですよ。
先祖が、弟子や魔術の素養のある者を迎え入れていた頃の名残です。
じゃあ、あれは全員、魔術師……？
ないないないない。
それはさすがに、ないですよ……。
魔術に関する知識は、当然、持ち合わせていますけれど。
それに寝具がふっかふか。
魔術師協会のおっさんが来るからなー。
客用のものって、気を使うんだよ。
部屋もピカピカ。
日常的につきそうな傷だって見当たらない感じで。
裏庭は綺麗に整理された畑が広がってるし。
その辺りは母の管轄ですね。
特に裏庭の手入れには気を使っていましたよ。
畑があるんだね。
育てているものって？
ほとんど、お茶用のハーブかな。
あとは、小さめの果物の木とか。
ご両親もいい人でな……。
俺みたいな魔術の素質のない相手にも、穏やかに接してもらって。
（素質がないって自分で……）
結局、寝ても覚めても緊張しっぱなしだった……。
魔術師の家系というのは、あれだけの人間を養えるだけの収入があるんだな。
魔術師業でやっていけてるけど……今後はどうなるかな。
今は魔術が衰退してきている時代だから。
……いずれは魔術師ではなくなる？
いや、それはないだろ。
この世界から魔素が消滅しない限り、魔術はなくならない。
そして魔素生物が自然発生する以上、防衛のための魔術師は必要だ。
今後も、魔術師と魔術師協会は細々と続いていくだろうさ。
単純に魔術師一本でやっていける環境じゃなくなるだろうってことだ。
オラシェにお住まいの魔術師でも、他に仕事を持った方が多いです。
魔術師業だけで続けている家系の方が、今も少ないでしょうね。
……何か、勿体ないな。
まあ、今後一切魔術が復興しないって決まったわけでもないし？
上手いこと科学と融合するかもしれないしな。
それはそれで楽しみにしてるよ。
