魔術機関
文字数 1,026文字
そういえばアレース、探してる魔術機関の女の子には会えたのかい？
ああ、いや、まだだ。
一般人には魔術機関の話をしても通じないし、
赤毛の女の子なんて、この世界中にごまんといるからな。
お話を聞く限り、彼女たちはひとところに留まっていないようですし、
見つけるのは大変でしょうね……。
何の話かサッパリわからないんだけど……
君、魔術機関を探してるのか？
外国にいた頃、助けられてね。
ろくに礼も言えないまま別れてしまったから。
ふーん……。
でも、魔術機関ってことは、女の子というよりおば
兄さん。
痛ぁい！
スハイルから魔素の塊飛んできた！
ほっぺのところで爆ぜてる、パチパチする！
（魔術で喧嘩してる……）
（……見えない）
あー、炭酸ぶちまけられた気分……。
で、その魔術機関ってどんな子？ 特徴は？
ふわっとした赤毛を短く切りそろえた女の子だ。
見た目は10代半ばってところかな。
俺が会った時は黒いワンピースを着ていたはずだ。
そういう子が君の好みと。
別にそういうわけじゃ……。
もう一発行きますか？
ごめんごめん。
すごい優しい顔してたから。
あれは？ 動物の特徴は？
動物？
魔術機関は、その……昔、国家間での戦争が多かった頃
戦力として魔術師によって作られていた人工生命のことなんですが、
より感覚や運動能力を向上させるために、
他の動物の特徴が取り入れられているのです。
ああ、猫っぽいって言っていたのは、
例えじゃなくて本当に猫っぽかったのか。
見えたのは一瞬だけだから自信はないけれど、
猫の耳としっぽのようなものが、ちらっと……。
それ以外は人間と同じような見た目をしていたはずだ。
なるほどね……そりゃ見つけづらそうだ。
全盛期に作られた個体だったら隠蔽くらい簡単に使えるだろうし、
ぱっと見、普通の人と変わりないからなあ。
変わりないの？
魔術機関の歴史をたどると、
どんどん外見の人間らしさが増しているんです。
本当に、制作者の趣味なんじゃないか、
という程度の動物らしさしか残っていないそうですよ。
ふーん……それじゃあ、この店にも
もしかしたら、そういうお客さんも来ているかもしれないのか。
どうかな。
このあたりの情勢は落ち着いているから、
魔術機関がうろついてるとは思えないんだよ。
魔術師協会の方でも、
この周辺では魔術機関を探知してはいないようですよ。
協会の立ち上げからずっと、観測は続けているんですが。
なるほどねー。
だからアレースは外国へ飛んでいくわけか。
別に、その子を探すのを第一にしているわけじゃないからな。
