第2話

文字数 970文字

子供の頃から、外であった事を何でも家族に話したくなる性格の私は、大好きな彼を当然家族に紹介した。先ずは、グラフィックデザインの仕事をしている姉を紹介。
かねてから、勤務先の商品ではなく オリジナルの商品を企画営業したい思いをつのらせていたので、姉のイラストを用いた商品の企画案を伝えると、彼が多いに乗り気で、先ずは彼の会社の商品に姉のイラストを採用してみてくれる事になった。
姉を交えての企画会議的な話をする時には、自宅で食事をしながらとなり、冬には3人で鍋を囲んで話し合った。
彼は間もなく 姉に話す時は私と同じように「お姉ちゃんさぁ…」と言うようになり、年齢順ではないけれど兄妹の会話のようになっていった。
時々は3人兄妹の輪に、姉の婚約者も加わった。
企画会議夕食は、いつも盛り上がったが、すき焼きの時には鍋が煮える迄の間の彼の動きが面白く、姉と必死に笑いを堪えた。
目線は鍋に集中しつつ、とんすいの生卵をチャッチャッチャッチャッ…とリズム良くかき混ぜ続けながら、商品アイデアを夢中になって語る様子は、真面目に会話したいのに笑えて仕方なかった。
彼との出会いから1年ほど経った頃に、私と姉で商品企画販売会社を立ち上げた。
堅物の父親からは反対され、資金援助など到底望めなかったが、彼が両親と会って、私たちを信頼して資金は用立てるので会社をやらせてあげて欲しいと説得してくれてのスタートだった。
彼は商品の製作工場だけでなく、同業者でありながら、取引先にも連れて回って販売先を紹介してくれた。
会社を立ち上げる時に、母は賛成してくれた。昔から新しくチャレンジすることには必ず応援してくれる人だった。
その頃母は父の転勤先である岐阜県に住んでいたが、業界の展示会に初参加の際は、母の在京の友人を引き連れて展示ブースのサクラまでしてくれた。そして母も早速彼のファンになり、彼は彼で「岐阜のお母さん」と呼んで、すっかり我が家の長男のように振る舞っていた。
こんなふうに始まった会社だったけれど、昼間は営業の外回りや工場への訪問をして、会社に戻ってから夜遅くまでかけて注文分の品出し梱包出荷の日々で、私は2年ほどで身体をこわしてしまい、会社を継続できなくなってしまった。
2年の間に、姉が結婚して一人暮らしになってもいたので、私は静養の為に 岐阜の両親の元に引っ越した。
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