第4話

文字数 488文字

そしてまた、彼と3人での鍋会議が再開された。
出会ってから10年。エスカレーターの下でエッチな目線を送っていた彼も、相変わらずな部分はあるものの、会社が大きくなり読む新聞もスポーツ紙から経済紙に変わっていた。鍋会議の話題も、私達が広告企画に方向転換した為、専ら彼の会社の商品アイデアとなった。
時が経っても変わらないのは、私と彼との関係だ。
10年前 初めて食事に行った日に決まってしまっていたから。
彼は結婚していて、当時生まれて間もない子供がいた。
それが前提で良ければ、これからもこうして逢いたいと打ち明けられた。
既に彼が憧れの存在となっていた私には、その前提条件はどうでも良いものに感じられた。
その日から、私は物分かりの良い性格を演じる事になってしまった。本当はやきもち焼きで、そこそこ独占欲もある方だったけれど、一切封じ込めなければ成立しない関係なのだから。
会わなくなるくらいなら、兄妹みたいな関係で良いと思った。でも、それは二十歳の私には厳しかった。
出さない手紙を沢山書いた。
それでも、彼とアイデアを話しながらの市場調査デートは、いつもワクワクするかけがえのない時間だった。
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