第7話

文字数 630文字

子供が1歳になった頃、彼が訪ねて来てくれた。
友人と旅行の途中との事だったが、多分この時に同行していた彼の友人は、気功や占い的な事をしている人だったと思う。帰り際に、良く聞こえなかったけれど「〇〇だから大丈夫だと思うよ」と、その人が彼に囁いていたのを覚えている。
彼は、私が実家で両親の協力を得て暮らしていたので、安心したようだった。
数年後彼から、私がパリで泣きながら気持ちをぶつけた時と子供を連れて実家に帰った時に、自分が決断するべきタイミングなのではないかと悩んだと言うような台詞を聞いた。
もしかしたら、この時に友人を伴って私を訪ねて来たのは、それを判断する為にだったとすると、この時の友人のアドバイス次第で私の運命は変わっていたのかも知れない。
その後も彼とは誕生日 クリスマス 年末年始にメールや電話のやり取りが続いていたが、少し鬱になりかけているとメールにあった時は、さすがに心配になり子供を両親に見てもらって北関東まで会いに行った。
随分と痩せた彼は元気を無くしていたけれど、私が帰る頃には昔の笑顔を見る事ができた。
会社が大きくなって、自分が動くことが少なくなった事や、ずっと引きずってきた夫婦関係等が彼を彼らしく生きにくくしていたのではないかと感じた。
会いに行った後、メールに何か新興宗教じみた台詞を見かける事もあり、彼の心の不安定さは感じたけれど、離れた場所で子育てをしながらの私に出来るのは、明るい話題のメールを送ったり、電話で励ます事くらいだった。
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