第10話

文字数 520文字

彼は出会ってからの40年間、私のアレルギー体質に良いと聞いた物は必ず送ってくれた。
社長としての悩みを打ち明けてくれた。
私の人生の節目には駆けつけてくれた。
私は彼にとって どんな存在だったのだろう。
最後のやり取りをする少し前に、体調が良くない時には とても辛いと話しながら「色々と好きな事もして来たし、悔いはないんだ…」と彼は言っていた。
その台詞を聞いて、私は貴方にとって何だったかと聞く気持ちになれなかった。
たとえ彼の今生での命が尽きてしまっても、将来またきっと彼方の世界で彼には会える気がするから、その時に聞けば良いと思えた。
奇しくも、お互いの子供の近影を送り合い、お互いの人生の時間を感じてからの別れとなったのも、きっと何かの計らいがあったのだろう。
とは言え彼に憧れ、仕事で彼に近付きたかった私は、起業した会社を志半ばで畳み、何処かに成し遂げられなかった思いを抱えている。
この5年間に母と父を、そして彼を見送った私はこれからをどう生きようかと考える。
再び彼方の世界で彼らと逢う時に胸を張れるように、素敵な生き方をしなければならない。
特に彼には、私と共に生きられなかった事を少しは後悔してもらいたい。
先ずはダイエットから始める事にしよう。
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