第3話 チョコキュー

文字数 997文字

チョコキューが食べたい……
家にいて俺はふとそんなことを思った。
チョコキューとは胡瓜にチョコレートを塗った食べ物で、また茄子にチョコを塗ればチョコナスになり、人参にチョコを塗ればチョコニンになる。
俺が食べたいのはチョコキューで、祖母がよく作ってくれたチョコキューを思い出して思わず涎を垂らした。

その祖母が作ったチョコキューは絶品だった。
とりわけ、母の作ったチョコサン(秋刀魚を焼いてそれにチョコを塗った食べ物)やチョコイカ(烏賊にチョコを塗った食べ物)よりも、ぐんを抜いて美味しくて、よく祖母に「チョコキュー作ってくれよ」とせがんだものであった。

祖母はそのチョコキューを我が家の秘伝の味として母に伝えた。
母は母でそれを自分なりにアレンジしてチョコ大(大根の煮付けにチョコを加えた食べ物)やチョコ丼(丼のご飯にチョコをかけた食べ物)などを作った。
それらの料理は市販の食べ物や店で出される料理などを超越していて、俺は我が家での食事が何よりの楽しみであった。

だが、それに反旗をひるがえしたのが父である。
父は大の辛党で祖母や母の作ったそれらを食べ物とは認めずに「こんな物は食えるか!」などと怒鳴りながら母の作ったチョコカレー(カレーのかわりにご飯にチョコをかけた食べ物)に醤油をかけた。その醤油のかけ方は尋常ではなくて、皿いっぱいになみなみとかけられ、なんと更に父は練り山葵のチューブを一本使い切ってそれを料理に混ぜた。
そこで出来上がったのがチョコわさカレー醤油味であった。

しかも父は更なる飛躍を目指し、祖母や母の作った料理をアレンジしていった。
そして、チョコスリッパたこ焼き風味(スリッパにチョコをかけてたこ焼きをのせた食べ物)やチョコ下駄ロンドン苺ジャム入り(下駄で苺ジャムを挟みチョコをかけた食べ物)などを作った。

しかし、そんな中にもやはり失敗作というものがあって、記憶に新しいのがチョコタクシー味噌煮込み運転手付きである。
これはタクシーにチョコをかけようとした時点で運転手に怒られてしまい、もう少しで裁判沙汰になるところまでいってしまったのであった。
まぁ、これも今では我が家の笑い話であるが。


つい、思い出話が長くなってしまったが、そんな訳で腹が減った俺はインスタントのラーメンを作って食べました。やはり、ラーメンの醤油味がシンプルで美味しくて一番好きです。
ちなみに親譲りなのか甘い物は苦手なのです
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