第14話 ヘイ、昔話

文字数 515文字

昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは銀行へ、おばあさんは役所へ、それぞれ仕事に行きました。二人の月収は合わせて二億円。いともたやすく喜びが手に入る環境です。

ただし、息子はロック歌手。月収は二円。名前はア太郎といいます。
ア太郎は毎晩泣きながら山で演歌を歌うのでした。

そんなある日、ア太郎はこーまんチキな殿様に呼び出され、お城で演歌を歌うことになりました。
その晴れ舞台は数日後です。

おじいさんとおばあさんはたいそう喜び、ア太郎に服を買ってあげました。
なんと、リクルートスーツです。

それに気を良くしたア太郎はそのスーツを着てお城へ出社。かなりご機嫌なご様子で、歌うことも忘れて仕事に熱中しました。

さて、約束をすっぽかされた殿様は怒り、ア太郎に二度と演歌を歌わせまいと、拷問、ハリツケの刑に処し、加えておじいさんとおばあさんの土地と家を没収する、といった振る舞いです。

土地と家、そして息子を一度になくしたおじいさんとおばあさん。たいそう悲しみにくれましたが世の流れですから仕方がございません。

それから、二人は野で暮らし、おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行き、余生を細々と暮らしましたとさ。
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