第4話 ラブホで老婆が口ずさむ最先端の真理

文字数 1,205文字

結婚したい……
と俺は今日そう思いました。
結婚のことを考えると飯も喉を通らない。けれども、身近に俺の嫁になってくれるような女性がいないので困った。
それで、ネットや雑誌で見かけたお見合いパーティーなるものに参加した。

まずは受付をして、会場に入ろうとしました。
しかし、途中で拾った犬二匹(雑種)は会場に入場できないということで、俺はその犬達を入口付近に繋ごうとしましたが、いかんせんまだ懐いておらず、吠えるし、俺の腕を噛むし、恥ずかしいやら苦しいやらで四苦八苦しました。

さてようやくなんとか犬達をなだめて入場しました。会場内には若いのやら俺の年ぐらいの男女がたくさんいます。
俺は気に入った女性(細めの美人、若干つり目)を見つけて近付いていった。

初めに挨拶をして、職業を聞かれた。
だが、自分は物乞いをして暮らしているので職に就いておらず、それでも何か職業らしきことはしているかな?と思って頭をひねった。
それならば俺は近所の人達からキチガイと呼ばれているのに思い至り「キチガイです」と答えた。
「まぁ、面白い。」
と言って彼女は笑ったが、俺は確かにキチガイと言ったはずだったので「この女は話を聞いていないな」と少し腹立ちを滲ませてもう一度「キチガイです!」と言った。

次にお互いの趣味の話になり、まぁ俺の趣味らしい趣味と言えば、墓場でお供え物を拾ったり、墓石に向かって愚痴をこぼしたりするくらいなので俺はそれをそのまま語った。
それで語りながら昨日の墓場での出来事(お饅頭を四個も拾った)を思い出して、つい、話の後で「ケケケケケ」と一人で笑ってしまった。

それから俺は墓場の話をするたびに「ケケケケケ」と思い出し笑いをして目の前の彼女に気味悪がられた。

その内、入口付近に繋いだ犬達が逃げようとして吠えまくって騒がしくなり、とうとう鎖をちぎって入場して会場内をパニックにした。
しかも、主人である俺にはいっこうに近付こうとしなかったので頭にきた俺はそこらにあった帚を持って犬達を追いかけた。

しかし、追い詰めたところで反撃にあい、俺は頭を噛まれて戦意が喪失し、おまけに犬から逃げる途中で転けて足首をひねった。
それでもなんとか起き上がり、命からがらさっきの彼女に助けを求めた。

すると、彼女の顔を見た俺は彼女との会話を思い出し、さらには昨日の墓場での出来事を思い出して、やはり「ケケケケケ」と笑ってしまったのだった。
頭から流血し、足を引きずりながらも、いっこうに笑い声はおさまらず、それでいて彼女を目指して近付いていった。
キャー!
という悲鳴とともに彼女は逃げて、いつしか犬達も消えていた。一人残された俺は未だ「ケケケケケ」と思い出し笑いをしていて、もちろん頭からは流血し、そして足を引きずりながら、ようやく会場から出ようとしたところ、どこからかやって来た警察官に職務質問をされて、犬二匹を盗んだ罪によって連行されたのであった。
ケケケケケ……
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