第1話 (兼家様ったら)
文字数 621文字
兼家様は、私を愛してくださっている。
かわいい太郎君 も、おなかのややも。
それにしても。
太郎君 の時は、お生まれになるまで、あんなに日もおかず訪れになって、私を気遣ってくださったのに。
この度は、お文だけの日が重なり、新しく受領 の中の姫と三日の餅を召し上がり、所顕し《 ところあらわし》をされ婚礼が成立されたとか。
噂によると、中の君は教養が高く、たいそうな美人で、素晴らしい歌詠みだとか。
世の殿方は、姫君が身ごもると浮気をなさるという話だったけど、兼家様に限ってそのようなことはあるまいと思っていたのに。
私が裳着 の儀の際、陰陽師に占わせたところ、
「姫君は、稀有な運命をお持ちです。位人臣を極める男君と結ばれ、お子達も、それぞれ最高の位におつきになり、姫君は国母となり、天皇をお産みあそばされるでしょう。」
などと、たいそうなことを言っていましたが、そんなこと、軽々しく口にする陰陽師など信じることはできません。
兼家様は、右大臣様の三番目のお子様。見目麗しく、豪胆で、たいそうご立派な殿方ですが、兄上様方も、噂に高いご立派な方々です。兼家様が私にお文をくださって、我が家の婿君となられたのは、私には過ぎたご縁、陰陽師の申したことは誠ではあるまいかと家の者は喜んでおりましたが。兼家様が位人臣を極められるとは、思えませんし。
このように、新しい姫君を迎えられるようでは、私が幸せな一生を送ることができるか心細くて気が休まることがありません。
かわいい
それにしても。
この度は、お文だけの日が重なり、新しく
噂によると、中の君は教養が高く、たいそうな美人で、素晴らしい歌詠みだとか。
世の殿方は、姫君が身ごもると浮気をなさるという話だったけど、兼家様に限ってそのようなことはあるまいと思っていたのに。
私が
「姫君は、稀有な運命をお持ちです。位人臣を極める男君と結ばれ、お子達も、それぞれ最高の位におつきになり、姫君は国母となり、天皇をお産みあそばされるでしょう。」
などと、たいそうなことを言っていましたが、そんなこと、軽々しく口にする陰陽師など信じることはできません。
兼家様は、右大臣様の三番目のお子様。見目麗しく、豪胆で、たいそうご立派な殿方ですが、兄上様方も、噂に高いご立派な方々です。兼家様が私にお文をくださって、我が家の婿君となられたのは、私には過ぎたご縁、陰陽師の申したことは誠ではあるまいかと家の者は喜んでおりましたが。兼家様が位人臣を極められるとは、思えませんし。
このように、新しい姫君を迎えられるようでは、私が幸せな一生を送ることができるか心細くて気が休まることがありません。