第9話 (兼家様と兄君方のこと)

文字数 550文字

 貴族の官位は、どなたが帝でいらっしゃるか、どなたが大臣でいらっしゃるかで、全く変わってしまう。

 兼家様には、お二人の兄君様がいらっしゃるが、長兄の伊尹(これまさ)殿は、兼家様のお父上のような存在で、何かとかわいがってくださった。冷泉天皇の治世のころ、一の姫超子が入内した。このころから、次の円融天皇の治世で、伊尹(これまさ)殿が太政大臣を務められていた時までの間。兼家様は、それはそれは目覚ましい昇進を遂げられたものだった。
 その間に、次兄の兼通殿を超えてしまわれ、お二人は犬猿の仲になってしまわれた。

 そうこうしているうちに、突然、伊尹(これまさ)殿が病にかかられて亡くなってしまわれた。
 兼道殿と兼家様と、どちらが後を継ぐのか。
 はらはらしながらも、私のできることなどなくただただ知らせを待っていた。

 人づてに聞いたところによると、道兼殿がお亡くなりになった安子様のお文に
「関白をば しだいのままにさせたまへ。 ゆめゆめたがへさせたまふな。」
(関白は、兄君のほうから順に任じてください。決して、違えてはなりません。
)としたためてあるのを帝にご覧に入れ、そのようになさったということだった。

 兼家様は、たいそう気を落とされたご様子でお帰りになった。そして、昇進は全くないどころか、官位を落とされ、失意の中で日々暮らしていらっしゃる。


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登場人物紹介

 主要人物

時姫             道長の母 兼家の正妻 子供は5人(五番目が藤原道長)。

受領の中の君 道長の父兼家の2番目の妻 子供は1人(藤原の道綱)。  百人一首に選ばれている有

       名な歌人 日本三大美人にも選ばれている。

兼家     道長の父 藤原北家、右大臣藤原師輔の三男。後に摂政、関白、太政大臣になる。

 主要人物以外の男君

師輔   道長の祖父 兼家の父 右大臣

伊尹   道長の伯父 兼家の長兄 

兼通   道長の伯父 兼家の次兄

道長   兼家と時姫の3男 他の人が生んだのを入れると5男  

村上天皇 伊尹・兼道・兼家の義兄(異腹の姉の夫)

冷泉天皇 村上天皇と安子の皇子

 主要人物以外の女君

安子   道長の父の姉 師輔の娘 伊尹・兼道・兼家の異腹の姉 村上天皇の妻(女御)

超子   道長の姉 兼家と時姫の娘 冷泉天皇の妻(女御) 三条天皇の母

栓子   道長の姉 兼家と時姫の娘 円融天皇の妻(女御) 一条天皇の母


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