第9話 (兼家様と兄君方のこと)
文字数 550文字
貴族の官位は、どなたが帝でいらっしゃるか、どなたが大臣でいらっしゃるかで、全く変わってしまう。
兼家様には、お二人の兄君様がいらっしゃるが、長兄の伊尹 殿は、兼家様のお父上のような存在で、何かとかわいがってくださった。冷泉天皇の治世のころ、一の姫超子が入内した。このころから、次の円融天皇の治世で、伊尹 殿が太政大臣を務められていた時までの間。兼家様は、それはそれは目覚ましい昇進を遂げられたものだった。
その間に、次兄の兼通殿を超えてしまわれ、お二人は犬猿の仲になってしまわれた。
そうこうしているうちに、突然、伊尹 殿が病にかかられて亡くなってしまわれた。
兼道殿と兼家様と、どちらが後を継ぐのか。
はらはらしながらも、私のできることなどなくただただ知らせを待っていた。
人づてに聞いたところによると、道兼殿がお亡くなりになった安子様のお文に
「関白をば しだいのままにさせたまへ。 ゆめゆめたがへさせたまふな。」
(関白は、兄君のほうから順に任じてください。決して、違えてはなりません。
)としたためてあるのを帝にご覧に入れ、そのようになさったということだった。
兼家様は、たいそう気を落とされたご様子でお帰りになった。そして、昇進は全くないどころか、官位を落とされ、失意の中で日々暮らしていらっしゃる。
兼家様には、お二人の兄君様がいらっしゃるが、長兄の
その間に、次兄の兼通殿を超えてしまわれ、お二人は犬猿の仲になってしまわれた。
そうこうしているうちに、突然、
兼道殿と兼家様と、どちらが後を継ぐのか。
はらはらしながらも、私のできることなどなくただただ知らせを待っていた。
人づてに聞いたところによると、道兼殿がお亡くなりになった安子様のお文に
「関白をば しだいのままにさせたまへ。 ゆめゆめたがへさせたまふな。」
(関白は、兄君のほうから順に任じてください。決して、違えてはなりません。
)としたためてあるのを帝にご覧に入れ、そのようになさったということだった。
兼家様は、たいそう気を落とされたご様子でお帰りになった。そして、昇進は全くないどころか、官位を落とされ、失意の中で日々暮らしていらっしゃる。