第4話 (たくさんのお子がいらっしゃること)

文字数 633文字

 兼家様のお子は、ただいま男のお子が三人、女のお子が二人。そのうちの二人は、私のお子で、お二人ともかわいらしく、たいそう賢い。おじいさまは右大臣でいらっしゃるから、先が楽しみに思われる。二人目の男のお子は、受領(ずりょう )の中の君のところにおられる。三人目の男のお子は、町の小路の女のところにおられる。二人目の女のお子は、源のなにがしの娘のところだ。まあ、お元気なこと。

 ところが、兼家様の悪い癖が出て、男のお子が生まれて間もなく、町の小路の女のところには、通われなくなってしまわれたと聞く。しかも、このお子様は、はかなくなってしまわれた。同じ女の身として、気の毒なことこの上ない。

 兼家様は、まずは受領(ずりょう )の中の君とよりを戻され、そののち、私のところにも通っていらっしゃるようになった。
 彼の君は、とげとげしいお言葉や、態度ばかりでね。まったく癒されないのだよ。など、私に聞かせるべきでないことをこぼされる。
 まあ、それは大変ですわね。と、微笑んで差し上げるのだけれど。相変わらず、お美しくて才知にとんだお歌をお詠みになるので、大切になさるようだ。兼家様の上の兄君の伊尹(これまさ)殿は、有名な歌人でいらっしゃる。伊尹(これまさ)殿が何かにつけて兼家様をひいきしてくださるのは、彼の方のおかげかもしれない。
 私の正妻としての地位が揺らがないのは、なんといっても太郎君(たろうぎみ)と一の姫の母であることだ。この世で、貴族として大事なのは美しい姫君を姉妹や娘として持つこと。

 私は、私の生き方で兼家様の正妻として生きる。
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登場人物紹介

 主要人物

時姫             道長の母 兼家の正妻 子供は5人(五番目が藤原道長)。

受領の中の君 道長の父兼家の2番目の妻 子供は1人(藤原の道綱)。  百人一首に選ばれている有

       名な歌人 日本三大美人にも選ばれている。

兼家     道長の父 藤原北家、右大臣藤原師輔の三男。後に摂政、関白、太政大臣になる。

 主要人物以外の男君

師輔   道長の祖父 兼家の父 右大臣

伊尹   道長の伯父 兼家の長兄 

兼通   道長の伯父 兼家の次兄

道長   兼家と時姫の3男 他の人が生んだのを入れると5男  

村上天皇 伊尹・兼道・兼家の義兄(異腹の姉の夫)

冷泉天皇 村上天皇と安子の皇子

 主要人物以外の女君

安子   道長の父の姉 師輔の娘 伊尹・兼道・兼家の異腹の姉 村上天皇の妻(女御)

超子   道長の姉 兼家と時姫の娘 冷泉天皇の妻(女御) 三条天皇の母

栓子   道長の姉 兼家と時姫の娘 円融天皇の妻(女御) 一条天皇の母


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