第6話 (道長・詮子のこと)
文字数 634文字
一の姫が入内なさる一年ほど前のころだったか。
御年三つになられた末の三郎 君(のちの道長)のやんちゃぶりがすさまじかった。貴重品の上等な紙をいつの間にか手にされびりびりにしてしまわれ、二の姫の大事な貝合わせの貝を投げ散らかしただけでなくかじってバラバラにされる。お諫 めしても、まだ言葉もわかられないのか、にこにこと笑っていらっしゃる。もう、どうして差し上げればよいのか、途方に暮れていた。
今はもっとすさまじくなっていらっしゃるが。
その時、うとうとしていたら、急に兼家様そっくりの大臣 になって現れ、満足げに微笑んで歌を詠まれた。
「このよをば わがよとぞおもふ もちづきの かけたることも なしとおもえば」 (娘三方が后 になられるとはのう。わたしは満月が全く欠けたところがないのと同じくらい満足である)
三郎君 の娘ということは、私の孫娘であろうか。いくら夢でも、そんなことが起こるはずもない。この夢のことは、誰にも話さず黙っったままでいる。
バラバラになってしまった貝合わせを見て、二の姫が泣き出してしまわれた。このままでは遊べない。そのうえ、お気に入りの姫君が描かれた貝が、かじられてしまって合わせられなくなったそうだ。どなたかにお願いして、新しい貝合わせを譲 っていただきましょうね。とお慰 めする。
さて、どなたに。兼家様の姉君である安子様が譲り渡しても良い品をお持ちで贈ってくださった。
このように、お子達とのにぎやかで、困りながらも楽しい日々が過ぎていく。
御年三つになられた末の
今はもっとすさまじくなっていらっしゃるが。
その時、うとうとしていたら、急に兼家様そっくりの
「このよをば わがよとぞおもふ もちづきの かけたることも なしとおもえば」 (娘三方が
バラバラになってしまった貝合わせを見て、二の姫が泣き出してしまわれた。このままでは遊べない。そのうえ、お気に入りの姫君が描かれた貝が、かじられてしまって合わせられなくなったそうだ。どなたかにお願いして、新しい貝合わせを
さて、どなたに。兼家様の姉君である安子様が譲り渡しても良い品をお持ちで贈ってくださった。
このように、お子達とのにぎやかで、困りながらも楽しい日々が過ぎていく。