ハッピーハロウィン2023!【中編】
文字数 3,016文字
部屋に響くは秒針と、忙しなくはしる筆の音。
魔界で開催されるというハロウィンに想いを馳せながら、
約束の時間に向けて、ユケイは勉強を頑張っていた。
そんな様子を少し離れたソファーから翠が見守っている。
ユケイく~ん。
ちょっと頑張りすぎ。そろそろ休憩したら~?
マンゴープリンありますよ~?
よっし、できた! 30ページっ!
19:00まであと1時間……。
簡単なミスがないか、答え合わせまでに見直しておかなきゃ……!
お腹空いてな~い~?
今日のお夕飯はチーズインハンバーグですよ~~??
……いつものレトルトですけど。
うわっ、ここ解答ズレてた。あっぶね。
この選択問題はAが正解かな~、でもCっぽいんだよなぁ~。
Bは絶対違くてDはどーみても引っ掛けだから、BとDは除外。
あ~~~AとC、どっちかわかんないよ~~~;
もう2分の1の確率に賭けるしか……(ブツブツ)
(あらら、聞こえてないみたい。
もう何回も鉛筆を削っているようだし、消しゴムのカスもすごい。
本当に頑張っていますねぇ……。
魔界のハロウィン……さて、どうしたものか。
翠ちゃん虫苦手なんですけどぉおお)
よ……よし、一通り終わったぞ!
もうオレにできることはない。あとは運命の時を待つのみだ。
あれ? 翠そこにいたの?
さっきまであっちで武器研いでなかった?
さっきからずっといましたよ。
……んもぅ。
そんなに頑張ってる姿を見せられちゃあねぇ、
翠ちゃんも考えてしまいます。
あと15分くらいですけど、答え合わせしてあげましょうか?
んーん、いい。
もうここまできたら自分の力で挑戦する。
見ててね、オレの勇士を! 100点とっても惚れんなよ!?
あらあら★
では時間までゆっくり休憩しましょ!
なんだか翠ちゃんも結果が気になってきましたよ~!?
そして遂に、運命の19:00が訪れた。部屋に暗黒のゲートがひらき、魔王の使いであるホタル我の魔物が現れた。
……失礼致します。
今夜は月が美しく、絶好のハロウィン日和で御座いますね……。
魔王ジギ様の命を受け、ユケイ様の学習状況を拝見しに参りました。
我らのハロウィンに参加をご希望でしたら、約束のものをご提示下さいませ。
よ、よ~~し……!
これが宿題だよ! 答え合わせ、お願いしますっ!
(学習ドリルを提出)
…………。
はい。確かに30ページ、確認致しました。
それでは採点を行いますので少々お待ちください。
(ドキドキ……。
これが受験生の子を持つ母親の気持ち……!?)
……お待たせ致しました。
さて、目標は正解率80%との事でしたが……
残念ながらそれに満たないようです。
んえええええええ~~~~~~!?!?;;;オレの正解なん%だったのーーーーー!?!?;;;
あ、あぁぁ……あの微妙な選択問題のせいだ。
2分の1の確率に、オレは敗北したんだ……!;
うわぁぁあああん! ハロウィン~~! 行きたかったよぉ~~~~!!
(床をゴロゴロのたうち回る)
79%って……。
ユケイ君にしては頑張ったじゃないですか。
いつもペケばっかりついてるのに、翠ちゃん驚き。
ふふっ……。
ユケイ様、ご安心下さい。
……実は、自力で30ページ取り組んだ事実があるならば、
正解率は問わず参加を認めると仰せつかっているのですよ。
……我らが慈悲深き王は、他者を数字で量るようなことは致しません。
目標に達することも大切ですが……結果がどうあれ、それに取り組む真面目な姿勢に重きをおかれているのです。
……さぁ、貴方様の為に城の門を開きましょう。
そちらの御方も、よろしければ是非。
オレ……ハロウィンに行ってもいいのん?(ぐすっ)
翠~~~…………?
あぁもう……ハイハイ、わかりました。
敵情視察も兼ねて、翠ちゃんも同行させて頂きますよ。
手ぶらでお招きされるのもなんですから、手土産でも持っていきましょうかね。
ちょっと待ってて下さい。ダッシュで買ってきますから。
(外出)
やったやったーー!!!!(ぴょんぴょん)
ハロウィンだ~~!!!!(小躍り)
ジギの想像のハロウィン、どうなってるのか楽しみなんだよ!
ハロウィンの本場、イギリス人のオレが審査員ね!(ウキウキ)
待つこと暫く、翠はサンタさんばりの大袋を担いで戻ってきた。
手土産として買ってきたのは、色々な種類のブレッド。
近くのパン屋から買い占めてきたのだという。
準備を整え、
ユケイと翠はホタル蛾のあとに続いて暗黒のゲートに足を踏み入れた。
一瞬の闇を越えると、景色が変わって月明かりの森。
冷たい風が頬を撫で、鬱蒼とした木々をざわざわと揺らす。
そして風の行く先には、巨大な城が聳えていた。
満月を遮る、蟻塚のような城。
その怪しげな雰囲気に相反して、
門の両脇にはジャック・オ・ランタンが積み上げられていた。
おどけた顔から溢れる灯りに、ユケイも顔がほころんだ。
カボチャの中身をくりぬいて、顔を彫る……。
これらの作業は蟻達にかかれば造作もない事でした。
……恐れ入ります♪
では案内致しましょう。
ハロウィンの催しは城の裏手にあります、孤児院のほうで行っております。
不思議な光を携えて、
ホタル蛾が先導するは城前に広がる白薔薇庭園。
暗がりに白を灯すほど、それらは大きく瑞々しく、
甘い香りで迎えてくれた。
石畳の通路を進んでゆくと、孤児院の明かりが見えてきた。
窓から溢れる光のなかで、
様々な種の子供達がお化けに扮してはしゃいでいる。
ユケイ達が到着すると、出迎えたのは竜王エミエルだった。
よく来たな、お前達。
ハッピ~ハ~ロウィ~ン♪
(大はしゃぎ)
ハッピーハロウィン!
エミエルはカボチャ30個の課題をクリアしたんだね。
うむ。30個では物足りないと思ってな、300個用意したぞ。
それをいっぺんに届けたらジギはひっくり返ってしまってな。
いやはや親切とは難しいものである。
す、スゲー;
超絶余裕のクリアだったんだね。
それに比べてオレは……(シュン)
どうした。悔いでも残ったか?
ならばお前もハ~ロウィ~ン実行委員の一員にしてやろう。
それでイベントに貢献し、汚名を返上するがよい。
ちなみに実行委員長は、ジギにこってりと怒られてしまったこの我だ(キリッ)
まぁそんな……!;
どうかごゆるりとなさって下さいませ。
竜王を働かせたなど、ジギ様に知れたら叱られてしまいます。
心配はいらぬ。
この役は我が買って出たのだ。
それに、ジギには皆の夕飯作りに専念してもらいたいのでな(よだれ)
あら、皆さんこれから夕飯なんですね。
……今夜はユケイ君がお世話になります。
ささやかなものですが、
良かったらみんなで食べて下さいな★
(大袋を渡す)
おお!
旨そうなパンがいっぱいなり!
寄付は大歓迎。ありがたく頂戴しよう。
……そっかぁ、今夜の主役はここにいる小さな子供達なんだね。
よーっし、オレも実行委員やるっ!
何をすればいいでありますか! 隊長!
さっきまでお客さま気分満々だったのに、いいんです~?
いいんだ!
みんなにハロウィンを知ってもらえるなら、オレも嬉しいから!
まさかのハロウィン運営側となったユケイ。
実行委員長エミエルとともに、子供達を楽しませ(それぞれの汚名を返上す)ることが出来るのか!?
【後編】へ続く!
(ドコドンッ★)
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