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文字数 664文字

「アベイユ、今日はバトーのポッケに入って来たんだね」


「さっき、そこの角で会ったからさ。入れてもらったんだ」


 アベイユは人身売買が絡んだ誘拐事件に巻き込まれて、きのこから生えていた人間部分を失った。

 でも、意識の移行が済んでいたから、こうしてリハビリを受けながら学校へ通っている。

 昨日、バンビーナも誘拐されていたら、アベイユ以上に悲惨な運命をたどったかもしれない。


「ねね、二人とも。アタシ、好きな人できちゃったかも」


 バンビーナの唐突なニュースに、アベイユとバトーはざわついた。


「追試前に出会ってしまうなんて、運命だね」


「何や。ついこないだまで、恋に恋してたんちゃうか。どないな人? 」


「この人なんだけど・・・・・・」


 Be Leftをさっそく見せる。


 Be Leftは最新動画がアップされたら、古い動画は消去される。思い出を見返したいときは、レコレクション機能を使う。ただ、他のユーザーのレコレクションは相手の許可が必要だが。


「って、フルフェイスやないかいっ。顔ぉ、わからんやんけ。不審者か」


「バンビーナ、この人大丈夫なの? 僕も不審者に見えるんだけど」


 まともな感性を持った二人から発せられた素直な感想をもってしても、バンビーナは己を曲げなかった。


「ううん、この人、山田スヴェードヴェリっていうの。昨日、誘拐されそうになった時に助けてくれて、おまけにカメムシのファンで小説も読んでるの」


「本当かなぁ? ちょっとプロフ見せて」


 バトーの胸ポッケから、アベイユが身を乗り出した。


「shit of Aim? 僕、この人知ってるよ」


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