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文字数 888文字

 バンビーナはベリから小さな白い箱を手渡された。


「なにこれ」


「お早めに。じゃっね☆」


「あ、待って。ちゃんとアタシのBe Leftも見て。アタシがもし」


「俺、高橋さんのピンチに駆けつける。捕食者に襲われてようが何だろうが必ず助ける。だから、そんな心配もうしなくていい」


 琥珀色の液体まみれの原付バイクに乗って、ベリは何の迷いもなく走り去ってしまった。


 地面に散らばったボルトの一つを拾い上げ、バンビーナは震える手で握りしめた。


「か、かっこいい……!」


 三人娘は軍隊と警察と救急隊員からひとしきり事情説明を求められた後、コメダ珈琲&おかげ庵で念願のぜんざい(お汁粉)を堪能した。


「そういえば、ベリがコレくれたんだけど」


「高そうな箱やんなぁ。何が入ってるん? 」


「お早めに、って言ってた」


「食べ物? 開けてみたら? 」


 バンビーナが白い箱を開けると『和三盆糖菓子』と書かれた紙と、菊の御紋入りの塊が六つ入っていた。


「なんだろうね、コレ。食べ物? 」


 アベイユがさっそくネットで調べる。


「みんなで二つずつ分けよ」


「バンビーナが(もろ)たンやろ。ウチらがお相伴預(しょうばんあず)かってええんかい」


「せやで、アタシの(おご)りや」
 

 ニセ関西弁でバンビーナが塊を分けていると、アベイユがすぐに正体を突き止めた。

「それ、落雁(らくがん)ていうお菓子なんだって。皇室の仕事をするとお礼にもらえるんだって」


「は? 皇室? 」


「天皇からの(たまわ)り物やん。バンビーナが一番に食べ」


「みんなで一緒に食べよう」


 バンビーナはアベイユが食べやすいように、落雁(らくがん)を小さく砕いた。ちょっと難しい。


「ありがと、バンビーナ。僕これで十分だよ。ていうか一個でも多い」


「そんなら余るな。どないする」


「明日、松本さんにあげよう。退院したばっかだけど、ちょっと遅いお見舞いということで」
「いいね。賛成」
「ええな、そうしよ。三人で渡しに行こ。ほな」


 三人一緒に口に含んで、高級和三盆を味わった。追試後の脳ミソに甘さが染み渡る。
 

 バンビーナのBe Leftに、三人で仲良く高貴な賜り物を食べている動画が360°カメラで撮影された。その映像に、クソエイムのベリからイイネ
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