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文字数 650文字

 ただでさえきのこから体が生えているというのに、授業でも菌類の歴史の勉強だなんて、やってられない。


「もういい、国語やる」


 バンビーナは国語の教科書を開き、平家物語の一文を見た。


・・・・・・与一、鏑を取って番ひ、よっぴいてひゃうど放つ。小兵といふでう、十二束三伏せ、弓は強し、鏑(かぶら)は浦響くほどに長鳴り・・・・・・


「よいち、かぶらをとってつがい、よっぴいてひょうとはなつ・・・・・・」


 指で文字をなぞり、バンビーナはつぶやいた。


「ひょう・・・・・・」


 空を切り裂く、ボルト(クロスボウの矢)と同じ音。


「よいち、かぶらをとってつがい」


 ベリ。山田スヴェードヴェリ。


「よっぴいて」


 Shit of Aim。


「ひょぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーうあはははははは」


 変なテンションになってしまい、バンビーナはふざけ散らかした。


「ひょぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーう!」


「バンビーナ! ちゃんとしなさいっ」


 一階から母のクレームが聞こえた。しかし、もう手遅れだ。


 夜中に一人で涙が出るほど笑い散らかしながら、バンビーナはクソエイムのベリが放った矢が、自分の心臓にクリティカルヒットしてしまったことを悟った。


 テスト前にクソエイムの矢に当たってしまうなんて、なんと運の悪い。

 しかしクソエイムといえど、胸に矢を受けて恋に落ちないのは無作法というもの。

 受けた矢は胸に大事にしまって、バンビーナはベリとの再会を願い眠った。


 テスト? 


 冬休みに潔く補修を受けるから問題ない。

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